愚かな詭弁を弄する東電(PART 1)
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放射能は誰のものか?
2011年夏、それが裁判所で争われた。
同年8月、福島第1原発から約45キロ離れた二本松市の「サンフィールド二本松ゴルフ倶楽部」が東京電力に、汚染の除去を求めて仮処分を東京地裁に申し立てた。
「事故のあと、ゴルフコースからは毎時2〜3マイクロシーベルトの高い放射線量が検出されるようになり、営業に障害が出ている。 責任者の東電が除染をすべきである」
対する東電は、こう主張した。
「原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではない。 したがって東電は除染に責任をもたない」
答弁書で東電は放射性物質を「もともと無主物であったと考えるのが実態に即している」としている。
無主物とは、ただよう霧や、海で泳ぐ魚のように、誰のものでもない、という意味だ。
つまり、東電としては、飛び散った放射性物質を所有しているとは考えていない。
したがって検出された放射性物質は責任者がいない、と主張する。 (略) 飛び散ってしまった放射性物質は、もう他人の土地にくっついたのだから、自分たちのものではない。 そんな主張だ。
決定は10月31日に下された。
裁判所は東電に除染を求めたゴルフ場の訴えを退けた。
ゴルフ場の代表取締役、山根勉(61)は、東電の「無主物」という言葉に腹がおさまらない。
「そんな理屈が世間で通りますか。 無責任きわまりない。 従業員は全員、耳を疑いました」
7月に開催予定だった「福島オープンゴルフ」の予選会もなくなってしまった。
通常は年間3万人のお客でにぎわっているはずだった。
地元の従業員17人全員も9月いっぱいで退職してもらった。
「東北地方でも3本の指に入るコースと言われているんです。 本当に悔しい。 除染さえしてもらえれば、いつでも営業できるのに」
東電は「個別の事業には回答できない」(広報部)と取材に応じていない。
(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
イラストはデンマン・ライブラリーより)
114-116ページ 『プロメテウスの罠』
著者: 朝日新聞特別報道部
2012年3月26日 第3刷発行
発行所: 株式会社学研パブリッシング
ケイトー。。。この場合放射能が「無主物」と言うのは、どう考えてもおかしいじゃないのォ!。。。ゴルフ場の代表取締役が「そんな理屈が世間で通りますか。 無責任きわまりない」と言ったけれど、おそらく一般の日本人の多くがそう考えるのじゃない?
そうですよ。 僕だってそう思ったのですからね。 それで日本とは全く関係ないシルヴィーに第3者としての意見を聞こうと思ったのですよ。
それで私を呼び出したわけね?
その通りですよ。
しばらく登場させてもらえなかったので、私はケイトーに嫌われてしまったのかと思っていたのよ。 うふふふふふ。。。
いや。。。そんなことはありませんよ。 僕はシルヴィーの熱烈なファンですからね。 うへへへへへ。。。
そんな事よりも日本の裁判所が東電に除染を求めたゴルフ場の訴えを退けたというのは、いったいどういうことなの?
シルヴィーも裁判所が出した判決に納得できない?
だってぇ〜、どう考えたって東電の責任じゃないの! 例えばよ、アメリカの秘密生物兵器研究所がよ、カリフォルニア州の地震地帯にあったとするじゃない。。。そこで研究するために保管していた炭疽菌が地震のために外部に漏れて、近所の住民に被害が及び死亡者が出たとするでしょう。。。そうなったら、研究所の保管の実態があばかれて、アメリカならば当然、市民団体が大騒ぎするわよ。 どう考えたって研究所の責任が問われてしまうわ。 福島原発だって、危機管理体制、保全体制が不十分だったために地震よって、あのような大事故が起きてしまったのよ。 安全に管理すべき原発が地震によって爆発した。 管理体制が不全だったので放射能が漏れたのよ。
やっぱり、シルヴィーもそう思う?
だって、そうでしょう! そのような事故が起こることは半世紀も前から解っていたことじゃないのォ!
あれっ。。。シルヴィーはそんな事まで知ってるのォ〜?
だってぇ、ケイトーが記事の中で次のように引用してたじゃないの!
闇に葬られた秘密報告書
この当時(1960年4月)、わが国最初の商業用原子炉として計画が進められていた茨城県の東海発電所で最悪の大事故が起こった場合に、どれほどの被害が発生し、日本政府がその被害を補償できるか、保険会社がそれを引き受けられるかどうかを、真剣に検討したものである。
秘密報告書であるから、沖縄返還における外務省の「核密約」文書と同じように、私たち国民はまったくその内容を知らされずに今日まできたが、私の知る限り一度、この秘密報告書の存在を毎日新聞が報道した。
この1974年の報道では、これを書いた日本原子力産業会議にその存在を確認しても、外務省と同じように「報告書はない」とシラをきったという。
(中略)
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「物的損害は、最高では農業制限地域が長さ1000Km以上に及び、損害額は1兆円以上に達しうる」と小さく書かれており、東海村からの半径が同心円で示されていた。
つまり図にやや濃く描いた園内の矢印範囲は、農業できない地域になる。
日本全土で農業ができないのだから、日本人が日本列島に住めないと考えてよいだろう。
(中略)
三段論法に従ってここまでの説明をまとめると
?原発の大事故は起こりうる。
?大事故が起これば日本はほぼ壊滅する。
?その可能性が最も高く、こわい原因として大地震が考えられる、という結論になる。
原発震災の被害を誰も償えないので、外国の保険会社は日本との契約を放棄した。
それなのに、当の被害者になる日本人がそれを知らずに生きているのは、大変不思議なことであると、読者はお考えにならないか。
(中略)
いよいよ迫る東海大地震と、
予期される浜岡原発震災
日本列島のちょうど真ん中、静岡県の駿河湾に面した御前崎というところに、トヨタ自動車などの名古屋経済圏のために建設された、中部電力の原子力発電所がある。
この浜岡原発には現在、三基の原子炉が稼動している。
浜岡原発は、今を去る34年前の1976年3月17日に、1号機が営業運転を開始した。
その運転開始からわずか5ヶ月後の8月23日に、当時東京大学理学部助手だった石橋克彦氏が地震予知連絡会で「駿河湾でマグニチュード8クラスの巨大地震が起こる」と、東海地震説にもとづく重大な警告を発した。
マグニチュード8.0とは、10万人を超える死者を出した関東大震災の、さらに1.4倍の破壊力を持った大地震ということになる。
(中略)
こうして、石橋氏の警告は、後年に確立されるプレート運動の理論によってその正しさが、次々と実証されてきた。
ところが、その警告が発せられて以来34年間にわたって、浜岡原発はこのとてつもない巨大地震の危険性と同居しながら、綱渡りの原子炉運転を続けてきた。
石橋氏は東京大学理学部で地球物理学課を学んだ屈指の地震学者であり、神戸大学の教授として、浜岡原発の危険性を裁判で訴え続けてきた。
(中略)
2004年には、浜岡原発を止めるために起こされた「原発震災を防ぐ全国署名」の賛同人に、京セラ創業者の稲盛和夫氏が名を連ねた。
「東海地震が今後30年間に起こる確率は87%」というのが、政府の地震調査研究推進本部の判断である。
これは、30年後に起こるということではない。
30年後かそれとも明日か、確率は発生時期を教えてくれない。
しかし87%なのだから、必ず起こる、ということは断言できる。
(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています
写真と地図はデンマン・ライブラリーより)
12-21ページ、28-29ページ
『原子炉時限爆弾』 著者: 広瀬 隆
2011年4月28日 第6刷発行
発行所: ダイヤモンド社
『日本の崩壊』に掲載
(2012年6月17日)
シルヴィーもこれを読んでいたんだァ。
福島の原発事故は、あの大きな津波の被害とともにカナダでも大きく取り上げられたじゃない! 現在はそれ程でもないけれど、当時はかなりセンセーショナルな事故だったわ。
その通りですよ。
だけど、判決を出した日本の裁判官は原発の危険性が昔から問題になっていた事を全く知らないようじゃない! 東電の経営者が無責任ならば、日本の裁判官も無責任なのよ。 つまり、被害を受けた国民のことを全く考えてないのよ。 ケイトーはそう思わないのォ〜?
そう思うから、こうして記事で取り上げたのですよ。 でもねぇ〜、裁判官が東電に除染を求めたゴルフ場の訴えを退けた理由が僕には判るのですよ。
いったい、どういう理由なのよ?
あのねぇ〜、もし、ゴルフ場の訴えを認めたならば、そのゴルフ場だけじゃなく、我も我もと東電を訴える会社や個人だ出てくる。 そうなったら、ゴルフ場だけじゃなくて、毎時2〜3マイクロシーベルトの放射線量が検出されている何万箇所の放射性物質を東電は除去しなければならないことになる。 もう、東電だけでは手に負えない多額な費用になり、最終的には、そのような事態を放置していた国の責任問題にまで発展してしまう。
つまり、ゴルフ場の訴えを認めると、そのような手に負えない事態に発展してしまうので裁判官が「事無かれ主義」で東電側を勝たせたと。。。?
その通りですよ。 裁判官にとっても重大事ですよ。 そのような判決を出したら、政治家や経団連や経済界の重鎮から叩かれる事になる。 その連中と結んだメディアにも叩かれる! つまり、ゴルフ場側を勝たせたら裁判官の出世の妨げになるのですよ。
要するに、裁判官は自分の出世を考えて判決を出したと。。。。?
断定はしないけれど、被害者の側じゃなくて体制側のための判決を出したことは確かなことですよ。 でも、それが平凡な裁判官の心理でと僕は思いますね。 裁判官だって弱い人間なのですよ。 自分の地位が揺らぐことが心配になる。 それで「事なかれ主義」に陥ってしまうのですよ。
でも、日本人の裁判官の中にも良心に従って判決を出す人物も居るのでしょう?
居ますよ。
被爆者たちの勝利
国から原爆症と認められなかった被爆者たちはまとまって裁判を起こした。
つい9年前のことだ。
肥田舜太郎(ひだしゅんたろう 94歳: 広島で被爆し、被爆者の治療に当たってきた、現在、さいたま市に住む医師)はその裁判で、被爆者側に立って大きな役割を果たした。
内部被爆の因果関係を証明するのは困難だ。
裁判で国は「内部被爆は無視し得る」と切って捨てた。
被爆者たちは論理ではなく、自らの体験を語るしかなかった。
その中で、被爆者の治療に当たってきた肥田の経験は大きかった。
2004年の大阪地裁。
肥田は証言台で、広島で経験したことを話した。
「このような議論をするとき一番大事な発火点は、人間として被害を受けた被爆者なんです。 それは、物理学者の議論でもなく、医学者の議論でもないのです」
2年後、大阪地裁で被爆者たちは勝利する。
国は控訴したが、棄却された。
その大阪地裁で国側の承認だったのが、東大大学院教授の小佐古敏荘(こさことしそう:62歳)だ。
国が決めた年間20ミリシーベルトの被爆基準を「私のヒューマニズムから受け入れがたい」と涙ながらに批判し、内閣官房参与を辞めた、あの人だ。
小佐古は証言後、「原爆放射線による人体への影響の主なものは、初期放射線による外部被曝であり、内部被曝によるものではない」とする報告書をまとめている。
それは肥田に対立するものだ。
しかし裁判所は肥田の考えを受け入れた。
(中略)
被爆者の病気が放射線によるものなのか。
国の姿勢からは「われわれのほうが科学的に正しい」という考えがにじみ出ている。
肥田は、政府が今回の(福島原発)事故後に「直ちに人体には影響はありません」と何度も強調したことに腹が立っている。
「直ちにはないが、もしかしたら影響が出る人もいるかもしれませんと、ちゃんと付け加えなくてはいけないでしょう。 66年前の原爆の話が今もこじれているんだ。 福島でも、また同じことが繰り返されるかもしれない」
(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
イラストはデンマン・ライブラリーより)
124-125ページ 『プロメテウスの罠』
著者: 朝日新聞特別報道部
2012年3月26日 第3刷発行
発行所: 株式会社学研パブリッシング
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