1リットルのお尻が流出(PART 1)
おしり大虐事件
ナースコールを押した。
コールで来てくれた(看護師)I君に、背中を向けた瞬間である。
さきほど病室に備え付けのシャワー室で、新しい病衣に着替えながら、
「なんか生臭い。 におうな」と感じた。
きっとこの病衣が臭いのだなと考え、I君にさらなる替えを頼もうとしていたところだった。
「はあ?」
わたしは何も異変に気づかず、いつものようにベッドの脇に突っ立って、髪をタオルで乾かしながら、女子のおしりをI君にさらすために、パンツのゴムに片手をかけていた。
I君のドナルド声の冷静なつぶやきに、思わず振り返り、自分の下半身に目を向けた。
「ぎゃああああああああああ!!!!」
病衣のズボンが、血と膿が混ざった濃厚なチョコレートファンデュのような液体で、全部びっしょりと染まっている。
液体の流出元は、何を隠そう、わたしの腫れたおしりである。
しかもなにやらこの液体は、床にまでしたたりじはじめている。
すさまじい、生々しい香りが病室を満たす。
1リットルの涙、ならぬ、1リットルのおしりが、流出した。
(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています)
158-159ページ 『困ってる人』
著者: 大野更紗
2011年7月30日 第7刷発行
発行所: 株式会社 ポプラ社
デンマンさん。。。しょうもない話を引用しはってぇ、笑いを取ろうとしてますのォ〜?
ちゃうねん。
そやかてぇ、ネット市民の皆様が注目するようなシモいタイトルを付けはってますやん。
シモいか?
先日も、あんさんは次のようなおシモの話を取り上げたばかりやおまへんか!
これが世界一のオナラの威力だ!
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■『曲屁(きょくべ)』
(2012年9月18日)
この記事もお尻に関係してますがなァ。
確かに、その通りやァ。。。そやけど、今日取り上げる話はネット市民の皆様から笑いを取るための話題ではあらへん。
そやけど、おシモの話題ですやん。
あのなァ〜、そないに思うかもしれへんけど、実は、この話はめれちゃんにとっても身につまされるような話やねん。
どこが。。。?
上の本の著者の大野更紗さんという人は日本でも稀な難病に蝕(むしば)まれている人なのやァ。 ちょっと次の小文を読んで欲しいねん。
日本ではほとんど前例のない、稀な難病にかかった大学院生女子、現在26歳。
ちなみに、病名は、Fasciitis-panniculitis syndrome (筋膜炎脂肪織炎症候群)とついている。
皮膚筋炎という、これまた難病も併発している。
(中略)
わたしの病気は、免疫のシステムが勝手に暴走し、全身に炎症を起こす、自己免疫疾患と呼ばれるタイプの難病。
免疫そのものがおかしくなっているので、人それぞれ特徴はあれど、全身あらゆる組織に症状が及ぶ。
「治す」というより、病態をステロイドや免疫抑制剤で抑え込んで、付き合っていくしかないのだ。
そして、さらには、それらの薬の及ぼす深刻な副作用とも、お付き合いせざるを得ない。
... 1日ステロイドを20ミリグラム服用し、免疫抑制剤、解熱鎮痛剤、病態や副作用を抑える薬、安定剤、内服薬だけで諸々30錠前後。
目薬や塗り薬、湿布、特殊なテープ、何十種類もの薬によって、室内での安静状態で、何とか最低限の行動を維持している。
それでも症状は抑えきれず、24時間途切れることなく、熱、倦怠感、痛み、挙げればきりのないさまざまな全身の症状、苦痛が続く。
... 2010年の夏には炎天下、あやうく行き倒れになりかけながら通院した。
週に一度麻酔なしで切開プチ手術を受けていた(当然だがチョーチョー痛い)。
冬は絶不調のピークだ。
ひとりでは外に出ることすらままならない。
強制ひきこもりを余儀なくされる。
寒さで身体に負荷が一気にかかり、すさまじい具合の悪さと、2トントラックが身体の上に乗っかっているような倦怠感と、常時格闘する。
(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています)
1-5ページ 『困ってる人』
著者: 大野更紗
2011年7月30日 第7刷発行
発行所: 株式会社 ポプラ社
つまり、1リットルのお尻が流出したのは自己免疫疾患のために、お尻に膿がたまってパンパンに腫れあがり、それが破れて血と膿が流れ出したということやのねぇ〜。
多分、そういうことやと思うねん。
それで、あんさんは何が言いたいねん?
とにかく、24時間途切れることなく、熱、倦怠感、痛み、挙げればきりのないさまざまな全身の症状、苦痛が続く。 しかも、2トントラックが身体の上に乗っかっているような倦怠感と、常時格闘する。 それに、尻が1リットル流出したら、まともに座ることができへん。 ごっつう大変なこっちゃがなァ〜!
ひとりでは外に出ることすらままならない。 強制ひきこもりを余儀なくされる。 そやから、あんさんが同じような難病になったら耐えられへんと言いたいん?
そうやァ。。。わては本を読みながら自分を更紗さんの立場に置いて考えてみた時に、めれちゃんの次の手記が思い出されてきたのやがなァ。
不安と焦燥感と寂しさ
2004/10/03 18:28
もう、このままで生きてるんなら、
命いりません。
ドナーカード持ってるから、
心臓でも角膜でも、
なんでも持っていって下さい。
家族はいません。
承諾とらなきゃいけない人は
誰もいません。
by レンゲ
『ん?体の関係と無責任大国日本』より
(2007年11月21日)
デンマンさん。。。これは、わたしやのうてぇ、レンゲさんが書きはったものですやん。
めれちゃんも同じような事を書いていたのやァ。
つまり、更紗さんのような難病に冒(おか)されて1リットルのお尻が流出したり、一人では外出もできなくなった時に、生きてゆくのがしんどうなって、初めて死にたいと思うようになる。。。あんさんは、そないに言いたいん?
そうやがなァ。。。わては上の手記を思い出しながら、更紗さんが書いたのならば納得がゆくような気がしてきたのやァ。
要するに、わたしの立場では死ぬほどのことはない。。。わたしが死ぬことをもてあそんでいたと、あんさんは言いたいん?
いや。。。そないに言うつもりはあらへん。 めれちゃんは、めれちゃんのオツムの中で深刻に生きるか死ぬかを考えていたのやと、わては思うでぇ〜。。。
そうですやん。。。人の苦しみは比較できへんものですう。 その人になってみんと解らへん。 そやけど、更紗さんになってみるなんて所詮できへんことですがなァ。 あんさんが更紗さんの立場になって解ったつもりになっても、何から何までその苦しみを理解するなんて絶対にできへんと、わたしは思いますう。
そうやろなァ〜。。。人はそれぞれに苦しみを抱(かか)え、ささいな幸せを感じながら懸命に生きているのかも知れへん。
あんさん。。。どこかで読んだような事を言って欲しくないねん。
うん、うん、うん。。。確かに苦しみを乗り越えて生きてゆくということは、今に始まったことではあらへん。 人間がこの世で生きてゆくようになってから何万年と繰り返してきたことやがなァ。 その苦しみは人によって質も量も違っていたかも知れへん。。。そやけど、苦しみのない人間なんておらへん。
そうやろか?
あのなァ〜、幸せばかりの人生を歩いていると自慢している人がいたら、その人はおめでたいか? よっぽどのアホやと、わては思うでぇ〜。。。
そうやろか?
あの狸オヤジの家康さんも次のように言うてたさかいになァ。。。
人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。
いそぐべからず、
不自由を常と思えば不足なし、
こころに望みおこらば困窮したる時を思い出すべし。
堪忍は無事長久の基、
いかりは敵とおもえ、
勝つ事ばかり知りて、
まくること知らざれば害その身にいたる。
おのれを責めて人をせむるな、
及ばざるは過ぎたるよりまされり。
【デンマン意訳】
人の一生と言うものは重い荷を背負って遠い道を行くようなものですよ。
急いではいけないのだ。
いつも不自由していると考えれば、不満が生じるはずがないんだよ。
何かがとても欲しいと思った時には、自分の過去にあった苦しい時代を思い出すことだね。
“堪忍”こそが無事に長く安泰でいられる基礎なんだよ。
“怒り”は敵と思いなさい。
また、人生では勝つ事ばかりを知って、負けを知らない事は危険ですよ。
自分の行動を反省することです。人の責任ばかりを追及する事は良くありません。
何かをやるとき、なかなか達成できない事の方が、やり過ぎてしまう事よりましなんですよ。
『性と愛は限りなく』より
(2006年5月28日)
要するに、誰もが、その人の世界の中で重荷を背負って生きていると、あんさんは言いたいん?
いや。。。わてが言うたのではあらへん。 狸オヤジが言うたのやがなァ。
そやけど、あまりにも消極的な暗い生き方やと思うわ。
そやけどなァ、小さな幸せ、心の支えになる光明というのは、ありふれた人間関係の中に隠れているものやがなァ。 更紗さんも次のように書いていたでぇ〜。。。
退院のソナタ
「おしりは、どうなの?」
「うん、まあ、変わりはないかな」
久しぶりに会った、男女として微妙な関係性にあるご両人が交わす会話としては、珍妙すぎる。
彼が本当は動かしてはいけない身体を動かして、黙々と作業するのを見ながら、いろんなことを考えた。
この人は、これまで、わたしの周囲の人間関係にはなかったタイプのひとだ。
電車の乗り方は知らないが、本も読まないが、フランス映画も観ないが、お役所の手続きも苦手だが、生存する「コツ」のようなものはよく知っている。
デートに行くなら、何をすればいいのだろう。
病院の「外」でデートしたとき、この「命の恩人」にわたしは何を思うのだろう。
どうしてここまでしてくれるのだろうか。
この人に、わあたしは何をしてあげられるのだろうか。
何が起こるのだろうか。
(中略)
デートする前に、あるいはデートしながら、この人がマジにあの世へおゆきになりかけてしまう事態に陥る可能性もおおいにある。
遊園地やレジャーランドの類は確実に救急車行きだ。
紫外線やバリアフリー状況も慎重に確認する必要がある。
そんなデンジャラスなデートを実行する場合、どこへ行けばいいのだ。
(中略)
「外」にでたら、難病トキメキデートスポットを発掘せねばならないな。
とりあえず、電車の乗り方も知らない、この人を連れて。
彼は荷物をまとめ終わると、
「またね。 そのうち、きっと会えるよ」
と、遠い彼方へ帰っていった。
ポン、とわたしの頭をなでて。
(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
イラストはデンマン・ライブラリーより)
306-306ページ 『困ってる人』
著者: 大野更紗
2011年7月30日 第7刷発行
発行所: 株式会社 ポプラ社
つまり、人間関係の中にこそ生きる張り合いが見い出せると。。。?
そうやァ。。。めれちゃんかて次のように書いていたやないかいなァ。
(すぐ下のページへ続く)