角さんと原発と天罰(PART 1)
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突然ですが、僕のお父さんは東電の社員です。
(2011年)3月27日の日曜日の毎日小学生新聞の1面に、「東電の人々のことを考えてるか」という見出しがありました。
北村龍行さんの「NEWSの窓」です。
読んでみて、無責任だ、と思いました。
みなさんの中には、「言っている通りじゃないか。どこが無責任だ」と思う人はいると思います。
確かに、ほとんどは真実です。
ですが、最後の方に、「危険もある原子力発電や、生活に欠かせない電気の供給をまかせていたことが、本当にとても危険なことだったのかもしれない」と書いてありました。
そこが、無責任なのです。
原子力発電所を造ったのは誰でしょうか。
もちろん、東京電力です。
では、原子力発電所を造るきっかけをつくったのは誰でしょう。
それは、日本人、いや、世界中の人々です。
その中には、僕も、あなたも、北村龍行さんも入っています。
なぜ、そう言えるのかというと、こう考えたからです。
発電所を増やさなければならないのは、日本人が、夜遅くまでスーパーを開けたり、ゲームをしたり、無駄に電気を使ったからです。
さらに、発電所の中でも、原子力発電所を造らなけらばならなかったのは、地球温暖化を防ぐためです。
水力では、ダムを造らなければならず、村が沈んだりします。
その点、原子力なら燃料も安定して手に入るし、二酸化炭素も出ません。
そこで、原子力発電所を造ったわけですが、その地球温暖化を進めたのは世界中の人々です。
そう考えていくと、原子力発電所を造ったのは、東電も含み、みんなであると言え、また、あの記事が無責任であるとも言えます。
さらに、あの記事だけでなく、みんなも無責任であるのです。
僕は、東電を過保護しすぎるかもしれません。
なので、こういう事態こそ、みんなで話し合って決めるべきなのです。
そうすれば、なにかいい案が生まれてくるはずです。
あえてもう一度書きます。
ぼくは、みんなで話し合うことが大切だ、と言いたいのです。
そして、みんなでこの津波を乗りこえていきましょう。
(東電社員の子供・ゆうだい)
小学六年生
(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
イラストはデンマン・ライブラリーより)
1-3ページ 『僕のお父さんは東電社員です』
編者: 毎日小学生新聞
著者: 森 達也
2012年1月15日 第1版第4刷発行
発行所: 株式会社 現代書館
『僕のお父さんは東電社員』に掲載
(2012年8月20日)
ケイトー。。。またこの手紙を持ち出してきたの?
いけませんか?
ちょっと、くどいんじゃない?
でもねぇ〜、原発は子供心にも無視できない問題になっているのですよ。
解らないでもないけれど。。。 でも、「角さんと原発と天罰」ってどういうことなのォ〜?
シルヴィーはインドネシア育ちだから「角さん」って言われても、よく分からないかもしれないけれど、元首相の田中角栄という人物のことなのですよ。 この人は小学校しか出てなくて、それで総理大臣になったと言うので豊臣秀吉の再来とまで言われ「今太閤」ともてはやされて国民の間に人気があった首相なのですよ。
その人と原発が関係あるの?
おおいに関係があるのですよ。
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上の人物が、その田中角栄総理大臣なの?
そうです。 写真の中にも書いてあるけれど、角さんは総理の座を原発の金で射止めたと言うのですよ。
まさかァ〜。。。 そんな事があり得るのォ〜?
あのねぇ〜、 角さんは学歴も金もコネも何もない人なのですよ。 その人が複雑で汚れた政界の中で頭角を現すには普通の事をやっていたのではとても総理大臣になれない。
それで原発に目をつけたの?
そうです。 なかなか目の付け所は良かった。 確かに日本はエネルギー問題で苦労していたのですよ。 オイルショックなんて事があってね。。。石油が出ない日本では外国の石油に頼るしか仕方がない。 その石油は主にアメリカが日本へ供給していた。 アメリカに石油を頼る限り日本はいつまでたってもアメリカの子分になって、何でもアメリカの言う事をハイ、ハイと聴かなければならない。 それじゃあ駄目だと角さんは思ったのですよ。
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つまり、角さんは「日本のエネルギー自立」を考えた。 ちょうどその頃、アメリカ大統領のニクソンが日本の頭越しに中国と国交を樹立した。 日本国民はびっくりした。 アメリカがそう出るならば日本だって中国と国交を樹立しようじゃないかと言うので、角さんも中国で毛沢東と会った。
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ところが、角さんの狙いは中国の石油にあったと言われているのですよ。
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つまり、アメリカに頼らずに中国と石油を共同開発して日本のエネルギーの自立を図(はか)ろうとしたのね。
その通りですよ。 でも、それに気づいたアメリカはムカついた。
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日本が石油を自力で開発することにでもなれば、アメリカの日本コントロールがうまくゆかなくなる。 それでアメリカは角さんを政界から追い落とす陰謀に出たのですよ。
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その証拠でもあるの?
あるのですよ。 ジャーナリストがアメリカ政府の機密文書を手に入れた。
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「日本が石油で自立してアメリカに依存しなくなると言うことはアメリカの国益に反する。 そのようなことになれば田中角栄の政治生命には重大な危機が訪れることになるだろう」 上の機密文書には、そう書かれてある。
つまり、これが後のロッキード事件に発展してゆくのね?
その通りですよ。
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アメリカの目論見(もくろみ)通りに角さんは政界を追われることになったのですよ。
原発はどうなったの。。。?
だから、角さんは総理大臣になるために原発でお金を生むことを考えた。
どのように。。。?
まず、1974年に「電源三法」を制定した。
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この法律は原発の立地地域に発電所の利益が還元されるようにする制度を作るためのものですよ。
なぜそのようなことを。。。?
あのねぇ〜。。。原発の恐ろしさは知る人ぞ知る恐ろしいものだったのですよ。 だから、その恐ろしさが国民の間に広まるのは原発を作るのにふさわしくない。 それで原発の報告書も闇に葬られるほどだった。
闇に葬られた秘密報告書
この当時(1960年4月)、わが国最初の商業用原子炉として計画が進められていた茨城県の東海発電所で最悪の大事故が起こった場合に、どれほどの被害が発生し、日本政府がその被害を補償できるか、保険会社がそれを引き受けられるかどうかを、真剣に検討したものである。
秘密報告書であるから、沖縄返還における外務省の「核密約」文書と同じように、私たち国民はまったくその内容を知らされずに今日まできたが、私の知る限り一度、この秘密報告書の存在を毎日新聞が報道した。
この1974年の報道では、これを書いた日本原子力産業会議にその存在を確認しても、外務省と同じように「報告書はない」とシラをきったという。
(中略)
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「物的損害は、最高では農業制限地域が長さ1000Km以上に及び、損害額は1兆円以上に達しうる」と小さく書かれており、東海村からの半径が同心円で示されていた。
つまり図にやや濃く描いた園内の矢印範囲は、農業できない地域になる。
日本全土で農業ができないのだから、日本人が日本列島に住めないと考えてよいだろう。
(中略)
三段論法に従ってここまでの説明をまとめると
?原発の大事故は起こりうる。
?大事故が起これば日本はほぼ壊滅する。
?その可能性が最も高く、こわい原因として大地震が考えられる、という結論になる。
原発震災の被害を誰も償えないので、外国の保険会社は日本との契約を放棄した。
それなのに、当の被害者になる日本人がそれを知らずに生きているのは、大変不思議なことであると、読者はお考えにならないか。
(中略)
いよいよ迫る東海大地震と、
予期される浜岡原発震災
日本列島のちょうど真ん中、静岡県の駿河湾に面した御前崎というところに、トヨタ自動車などの名古屋経済圏のために建設された、中部電力の原子力発電所がある。
この浜岡原発には現在、三基の原子炉が稼動している。
浜岡原発は、今を去る34年前の1976年3月17日に、1号機が営業運転を開始した。
その運転開始からわずか5ヶ月後の8月23日に、当時東京大学理学部助手だった石橋克彦氏が地震予知連絡会で「駿河湾でマグニチュード8クラスの巨大地震が起こる」と、東海地震説にもとづく重大な警告を発した。
マグニチュード8.0とは、10万人を超える死者を出した関東大震災の、さらに1.4倍の破壊力を持った大地震ということになる。
(中略)
こうして、石橋氏の警告は、後年に確立されるプレート運動の理論によってその正しさが、次々と実証されてきた。
ところが、その警告が発せられて以来34年間にわたって、浜岡原発はこのとてつもない巨大地震の危険性と同居しながら、綱渡りの原子炉運転を続けてきた。
石橋氏は東京大学理学部で地球物理学課を学んだ屈指の地震学者であり、神戸大学の教授として、浜岡原発の危険性を裁判で訴え続けてきた。
(中略)
2004年には、浜岡原発を止めるために起こされた「原発震災を防ぐ全国署名」の賛同人に、京セラ創業者の稲盛和夫氏が名を連ねた。
「東海地震が今後30年間に起こる確率は87%」というのが、政府の地震調査研究推進本部の判断である。
これは、30年後に起こるということではない。
30年後かそれとも明日か、確率は発生時期を教えてくれない。
しかし87%なのだから、必ず起こる、ということは断言できる。
(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています
写真と地図はデンマン・ライブラリーより)
12-21ページ、28-29ページ
『原子炉時限爆弾』 著者: 広瀬 隆
2011年4月28日 第6刷発行
発行所: ダイヤモンド社
『日本の崩壊』に掲載
(2012年6月17日)
このように原発の恐ろしさを知っている人はたくさんいた。 だから、国民に原発の設置を納得させるには「原発の立地地域に発電所の利益が還元されるようにする制度」を作ればいいのですよ。 角さんはそう考えた。 そのような経緯(いきさつ)で新潟県に世界最大級の柏崎刈羽原子力発電所はできた。
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事実、この原発ができたおかげで柏崎市は32年間に 1,133億円の交付金にありついた。
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