野火(PART 1)
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ケイトー。。。 またバンクーバー図書館からDVDを借りて『野火』を観たの?
そうなのですよ。
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■『実際のカタログページ』
日本に居る頃にも見たのだけれど、かなりショックを受けてね。
どういう話なの?
次のような話ですよ。
野火
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『野火』(のび)は、大岡昇平の小説。
1951年、『展望』に発表。
翌年に創元社から刊行された。
作者のフィリピンでの戦争体験を基にする。死の直前における人間の極地を描いた、戦争文学の代表作。
題名の「野火」とは、春の初めに野原の枯れ草を焼く火のこと。
1959年には大映で映画化された。
角川エンタテインメントからDVDが発売されている。
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あらすじ
太平洋戦争末期の日本の劣勢が固まりつつある中でのフィリピン戦線が舞台である。
主人公田村は肺病のために部隊を追われ、野戦病院からは食糧不足のために入院を拒否される。
現地のフィリピン人は既に日本軍を抗戦相手と見なす。
この状況下、米軍の砲撃によって陣地は崩壊し、全ての他者から排せられた田村は熱帯の山野へと飢えの迷走を始める。
律しがたい生への執着と絶対的な孤独の中で、田村にはかつて棄てた神への関心が再び芽生える。
しかし彼の目の当たりにする、自己の孤独、殺人、人肉食への欲求、そして同胞を狩って生き延びようとするかつての戦友達という現実は、ことごとく彼の望みを絶ち切る。
ついに「この世は神の怒りの跡にすぎない」と断じることに追い込まれた田村は「狂人」と化していく。
人肉を食う場面は、映画内では「栄養失調で歯が抜け、食べられなかった」という処理が行われた。
これは、映画の持つ表現の直接性を考慮し、観客に「食べなくてよかった」と感じさせるための変更である。
出典:
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ケイトーがショックを受けたってぇ、どういうところでショックを受けたの?
それまでの戦争の印象とはかなり違っていてね。。。 フィリピンの戦争で、敗残兵になった日本兵が同じ敗残兵の日本兵を狙(ねら)って撃ち、その肉を“干し肉”にして食べるのですよ。 それどころか、人間の肉も、撃ってすぐに食べると肝だとかは旨いらしくて内臓に手をつっこんで、その肝を取り出して食べるシーンまで出てくるのですよ。
あらっ。。。 そんなシーンまで出てくるの? ちょっと教育上良くないんじゃない?
DVDには市川崑・監督のインタビューも含まれているのだけれど、その中で「現在ならばそのシーンは当然上映できないでしょうね」と言ってましたよ。 主人公の田村を演じるのが船越英二さんです。
日本では有名な俳優さんなの?
あのねぇ〜、船越さんは1970年(昭和45年)から始まったTBS人気ドラマ『時間ですよ』の銭湯の主人になる人なんですよ。
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おそらく僕のように戦後生まれの人にとっては「銭湯の主人」のイメージがあるから、『野火』の中のイメージは別人のような印象を持つはずですよ。
。。。で、その主人公の田村さんは人肉を喰う立場なの? それとも喰われる立場なの?
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この上の写真で背を向けているのが田村で顔を見せているのがミッキー・カーチスさんが演じる永松です。 兵隊の田村は永松が「サルの肉」だと言って差し出す干し肉を食べようとするのだけれど、歯が折れてしまって食べることができなくて吐き出してしまう。 上の説明にも書いてあるけれど、観客に「食べなくてよかった」と感じさせるための原作からの変更ですよ。
。。。で、生の人肉を食べるシーンも出てくるの?
出てくるのですよ。 あからさまに生の人肉を食べるシーンは出てこないのだけれど、20メートルぐらい離れた所からカメラが写している。 滝沢修さんが演じている安田という兵隊が同僚の兵隊を撃って内臓に手を突っ込んで肝を食べるのですよ。 明らかに生の人肉にハマっているように夢中になって食べる。 実は、次のシーンでは主人公の田村が永松に撃たれて食べられそうになる。
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。。。で、田村はアタマが狂ってしまうの?
いや。。。まだしばらくは正気ですよ。 でもねぇ〜、次のシーンのように狂ってしまった将校に出くわすのですよ。
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この人物は浜村純さんが演じている狂人の将校なのだけれど、田村が初対面で出会う時には普通の将校のように見える。 ところが話しているうちに次第に狂気を晒し出してゆく。 このシーンでは自分の排泄物を食べてから「オレが死んだら、ここの肉を食べてもいいよ」と二の腕の辺りを指差して不気味に話しかけているところなのですよ。
なんだか気持ちが悪くなるような映画ですわね。
シルヴィーが観たら、まず吐き気を催(もよお)すだろうと思いますよ。 (苦笑)
ウンチを食べたり、人肉を食べたり。。。 私はそういう映画は駄目なのよ。 でも、どうしてケイトーは同じ映画をまた観る気になったの?
DVDには“Behind the Scene”のような記録映画が含まれているのじゃないかと思って借りたのですよ。
それで、映画制作現場の記録映画が観られたの?
いや、制作現場の記録映画はなかったけれど、市川崑・監督、ミッキー・カーチスさん、それにドナルド・リチ−(Donald Richie)さんのインタビューを観ることができました。
何か面白いエピソードでも聞けたの?
あのねぇ〜、僕は子供の頃にテレビでミッキー・カーチスさんがロカビリーを歌うのを見たことがあったけれど、まさか『野火』の中に出てくる兵隊の永松をミッキー・カーチスさんが演じているとは思わなかった。 マジで意外だったのですよ。
つまり、ケイトーは永松を演じていた役者の名前を知らずに観ていたの?
そうなのですよ。 ミッキー・カーチスさんだとは思わなかった。 名前からカーチスさんが混血児だと思い込んでいたから、まさか日本兵の役で演じているとは思わなかった。 若い頃はどこかに外人の面影があったように思うのですよ。 でも、『野火』を観ていると永松の表情は、どう見ても日本人なのですよ。 しかもインタビューの中のミッキー・カーチスさんは、かなり年をとったけれど日本人と変わりがない。 ウィキペディアで調べたら両親ともにイギリス人とのハーフだということがわかった。 現在のミッキー・カーチスさんは70歳を過ぎているけれど、どう見ても日本人に見えますよ。
でも、イギリス人の血が4分の1は入っているということね。
理論的にはそういうことですよ。 確かに彼の話す英語には日本人の訛(なま)りがほとんどない。 全くのバイリンガルです。 驚きました。
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