花は咲けども山吹の(PART 1 OF 3)
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七重八重
花は咲けども
山吹の
実の一つだに
なきぞ悲しき
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デンマンさん。。。 あんさんは山吹の短歌を持ち出してきやはってぇ〜、わたしにこの歌のエピソードでも話して聞かせるつもりやのォ〜?
めれちゃん。。。 よう分かるなァ〜? さすがに『即興の詩』サイトを立ち上げて一世を風靡しただけのことがあるやんかァ。
■『即興の詩バンザイ』
(2010年12月4日)
あんさん!。。。 いい加減な事を言うてほしくないねん。
そないに謙遜するほどのことでもないやろう。 素直に喜んでおきィ〜なァ。
喜べますかいなァ〜。。。 わたしが『即興の詩』サイトを閉鎖してしもうたさかいに、あんさんは嫌味を言うてますねん。
ちゃうでぇ〜。。。 わては、ずうっと以前から、めれちゃんの短歌と詩に魅せられておるねん。 そやから、こうして山吹の里の歌を取り上げたのやないかいなァ。
いったい、どないなエピソードがこの歌に隠されていると、あんさんは言わはるのォ〜?
めれちゃんも興味があるやろう? 次のエピソードを読んで欲しいねん。
太田道灌の山吹の里エピソード
ある日、狩りをしていた太田道灌が、豊島郡の高田という土地のあたりまで来たところ急に雨が降り出した。
(これは困った。 どこぞの家で蓑でも借りようか。。。)
そう思って辺りを見回すと一軒の農家があった。
道灌はその家の入り口まで近づくと声をかけた。
まだ年端もいかぬ少女が家から出てきた。
道灌は、その少女に、貧しげな家屋に似合わぬ、どこか気品を感じて目を見張った。
「急な雨にあってしまった。 後で城の者に届けさせるゆえ、蓑(みの)を貸してもらえないだろうか?」
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少女はちょっと困った様子だった。 しばらく道灌をじっと見つめてから、スッと外へ出ていってしまった。
(外の小屋にでも蓑をとりにいったのであろうか?)
そう思いながら道灌は少女の背中を眼で追った。
しばらくして少女が戻ってきた。 しかし、少女が手にしていたのは蓑ではなく、山吹の花一輪だった。
雨のしずくに濡れた花は、凛として美しかったが、見ると少女もずぶ濡れで黙って山吹の枝を差し出した。
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(一体この少女は山吹の枝を差し出して、どういうつもりなのだろうか?)
いぶかしく思いながら道灌は少女の眼をじっと見つめた。 「私は蓑を借りたいのだが。。。」
「申し訳ございませぬ。 どうかこの山吹の枝をお納めくださいませ」 少女は、そう言うと伏し目がちに枝を差し出した。
(この山吹のことをこの辺りでは“みの”と言うのだろうか?)
少女の困りきった風情を眼にして、それ以上尋ねるのが忍びなく、道灌は仕方なしに立ち去った。
その夜、道灌は近臣にこの事を語った。
すると、近臣の一人が進み出て言った。
「いいえ、この辺りの農家では山吹のことを“みの”と言ったりはいたしません」
「しかし少女は私が蓑を貸して欲しいと言ったのに山吹の枝を差し出したではないか」
「その少女は和歌のたしなみがある者と存じます」
「和歌のたしなみと蓑がどのように関係しているのじゃ?」
「実は、後拾遺集の中に醍醐天皇の皇子・中務卿兼明親王が詠まれたものに、『七重八重 花は咲けども 山吹の 実の一つだに なきぞ悲しき』という歌がございます」
「つまり、山吹の“実の”と“蓑(みの)”をかけたと申すのか?」
「さように存じます。 その娘は、蓑一つなき貧しさを恥じたのでありましょう」
道灌は自分が少女の気持ちを見抜けなかった事を恥じ、翌日少女の家に蓑一つを携えて使者を使わした。
しかし、使者がその家についてみると、すでに家の者はだれもなく空き家になっていた。
道灌はこの日を境にして、歌道に精進するようになった。
道灌は25歳の若さで、江戸城を築城し、「江戸」の原型を造った。
また、「道灌かがり」と呼ばれる独自の築城方式を編み出し、現在でも皇居内に「道灌堀」という堀が遺っており名城と謳われた。
更に、「足軽之軍法」を編み出した軍師としても名声を残した。
その後、運があって道灌は少女と再会した。 それ以来、道灌は歌の友として処遇したと言う。
しかし、良い事ばかりは続かない。
---人間万事塞翁が馬---
その後、その秀でた才能を主君に疎まれ、道灌は暗殺されてしまった。
デンマンさん。。。 あんさんのエピソードには大きな間違いがありますでぇ。。。?
。。。ん? 。。。大きな間違い。。。?
そうですう。。。 山吹の花には実がなりまへん。
それはちゃうでぇ〜。。。 山吹には一重咲きと八重咲きがあるねん。 めれちゃんが言うてるのは八重咲きの方の山吹のことやァ。
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この上の写真がその八重咲きの山吹やァ。 そやけど一重咲きの山吹にはマジで実がなるねん。
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この上の写真が一重咲きの山吹の実やのォ〜?
そうやァ。。。
。。。で、あんさんは、どないな訳で山吹の花のエピソードを持ち出してきやはったん?
山吹の枝を差し出した少女は貧しさゆえに野良(のら)の露と消える運命にあった。 そやけど、縁があって太田道灌と再会する事になり、「歌の友」として甦(よみがえ)ったのやがなァ。
それで。。。?
そういえば、めれちゃんとわても「歌の友」やったなあああァ〜。。。、と思ったのやがなァ〜。。。
それは、あんさんの夢の中の事ですやろう?
めれちゃん。。。 惚(とぼ)けた事を言わんで欲しいねん。 たぶん、めれちゃんがそう言うやろうと思ったさかいに、わてはちゃんと証拠を用意しておいたのやァ。 ちょっと次の検索結果を見て欲しいねん。
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赤枠で囲んだ記事に注目して欲しい。
■『雨よ去れ』
(2008年6月18日)
この上の記事の中で、めれちゃんとわては次のような短歌のやり取りをしておるのやでぇ〜。。。
雨よ去れ
はげしさに
わが夢破る
雨よいざ
思いを連れて
この身より去れ
by merange (めれんげ)
2008.06.14 Saturday 12:28
『即興の詩 短歌「雨よ去れ」』より
(すぐ下のページへ続く)