消えたカラスの巣(PART 1)
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“カアちゃん、アタイも
巣立ちしないといけないの?”
“あたりまえよ。 婚活して
早くボーイフレンドを見つて
卵を産むのよ。”
Subj:小百合さん、おはよう!
元気でやってますか?
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Date: 27/05/2012 04:09:20 PM
Pacific Daylight Saving Time
日本時間: 5月28日(月)午前8時9分
From: denman@coolmail.jp
To: sayuri@hotmail.com
CC: barclay1720@aol.com
2012年5月27日午後1時20分
小百合さん元気でやってますか?
GWには軽井沢に出かけましたか?
それとも伊豆ですか?
バンクーバーもめっきり春めいてきて、初夏ももうすぐという感じです。
カラスの巣の周りが今月の初旬には葉っぱもまだ無く“はげ坊主”でしたが、今では新緑の緑に包まれて、カラスの親子4人が毎日森林浴をしているように見えます。
一家団欒、微笑ましいものですよ。
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それにしてもカラスの雛の成長の早いこと!
あっという間に雛がカラスになってしまったという感じです。
最近では巣立ちを促そうと、母カラスと父カラスが巣から離れて子供たちを枝の方へと誘います。
でも、やっぱり巣から出るのが怖いのか?
二匹の子供カラスは巣の外に出ようとしません。
まだ両親と比べると体は二周りぐらい小さいのですが、もう、ちゃんと大人の形をしていますよ。
飛ぶ気になれば飛べそうな大きさになってます。
でも、羽ばたく様子を見ていると、飛んでもすぐに落ちてしまいそうな勢いしかありません。
巣立つまでに多分あと1週間ぐらいかかるでしょう。
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それにしても、去年は巣にやって来なかった。
どうして今年、巣に戻ってきたのか?
カラスが“成人”するのに2年かかるとは思えない。
1年で充分だと思えるのに、1年間巣を空っぽにしていた理由が解らない。
恐らくカラス特有の匂いが付いているから、他の鳥は卵を産まないのでしょうね。
去年は巣が、ずっと空っぽでしたよ。
でも、他のカラスだったら卵を産みそうなものなのに、去年はどのカラスもやってきませんでした。
やっぱり、カラスも他人の巣の中では安心して卵を産めないのだろうか?
しかし、今年卵を産んだ母カラスが一昨年生まれた同じカラスだという確証はありません。
もし僕がカラスだったら、巣を作るのが面倒なので、昔の巣を思い出すでしょうね。
一昨年生まれたカラスが戻ってきたと僕が思ったのは、ただそれだけの理由です。
ところで小百合さんの子育ても一段落しましたか?
相変わらず子供の問題で頭を抱えているのですか?
小百合さんも母カラスと父カラスのように子供が巣立つように促す時期に来ていると思います。
あまり子供にかかわらず、たまにはバンクーバーにやってきて小百合さんの第2の青春を謳歌してくださいね。
\(*^_^*)/ キャハハハ。。。
じゃあねぇ。
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『カラスの巣立ち』より
(2012年5月29日)
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デンマンさん。。。 「消えたカラスの巣」というのは上のカラスの親子が居た“カラスの巣”ですか?
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そうですよ。。。 他のカラスの巣など関心ないですからね。。。
どうしてカラスの巣が消えていたというのが解ったのですか?
あのねぇ〜、カラスが初めて、僕のマンションの窓から5メートルほど離れたポプラの木に巣を作って 子育てをしたのは2010年の春だったのですよ。 2011年の春にもカラスがやって来て卵を産むかなと見ていたら、やって来なかった。 でも、2012年はやって来て卵を産んで子育てを始めたのですよ。 上のメールはその頃のものですよ。
2013年の春もやって来たのですか?
いや。。。 やって来なかった。 これまでのことを考えると1年おきにやって来るだろうと思ったので、今年の春先にはやって来るだろうと思って一昨日窓の外のカラスの巣を見たら、きれいさっぱり消えていたのですよ。
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あらっ…マジで消えてしまいましたわね。 台風で吹き飛ばされたのですか?
いや。。。 バンクーバーには日本のような台風はやって来ない。 しかも、嵐と呼べるようなものもない。 だいたい、カラスの巣を吹き飛ばすほどの猛烈な風雨は、かつて一度も見たことがない。
去年の春にはカラスの巣はあったのですか?
ありましたよ。 去年の夏には、まだあったと思うのですよ。
じゃあ、リスとかフクロウとか他の鳥が巣作りに使うので、空いていたカラスの巣を持っていってしまったのではありませんか?
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多分、その可能性が一番高いのじゃないかと思うのですよ。
でも、去年の夏から一昨日まで、どうして巣が消えてしまったのに気づかなかったのですか?
10月の下旬に日本へ帰省しましたからね。 それに、普段、カラスの巣など気にしませんよ。
じゃあ、どうして一昨日になってカラスの巣が気になったのですか?
あのねぇ〜、バンクーバー市立図書館で次の本を借りていたのですよ。
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それで、一昨日、この本を読み始めたのですよ。 なかなか面白い本で、「そう言えば、今年の春にはカラスがやって来るだろうか?」。。。 そう思いながらふと外を見たら、カラスの巣が消えていたというわけですよ。
。。。で、上の本を読んで何か面白いことでも書いてあったのですか?
そうなのですよ。 あのねぇ、普通、我々は なにげなく“カラス”と言うけれど、実は“カラス”という鳥はいないのだそうです。
でも、現実に“カラス”は日本のどこへ行こうがいるではありませんか!
あのねぇ〜、確かにそうなのですよ。 でもねぇ、厳密に生物学的に言うと“カラス”という種はないのだそうです。 全て“アメリカガラス”、“スンダガラス”、“ムナジロガラス”と言うように、“何とかガラス”という名前が付いている。 つまり、生物学的に言うと“カラス”と言う名の鳥はいないのだそうです。
でも、それは、なんだか言葉遊びのように聞こえますわ。 日本中どこへ行っても“カラス”で通用しますわ。
確かにそうなのですよ。 でもねぇ〜、日本の町や村に居るカラスは、ほとんどが“ハシブトガラス”か“ハシボソガラス”だそうです。
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ハシブトガラス
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ハシボソガラス
ハシブトガラスは都市部でよく見かけるカラスだ。
東京でカアカア鳴いている、あれがハシブトガラスである。 ... ハシブトガラスのくちばしは長く太く、アーチ状になっている。
(中略)
ハシボソガラスは... 平均するとハシブトガラスよりも一回り小さい。 ... くちばしはハシブトガラスのように曲がっておらず、ストレートな形をしている。
... このように似ているようでちょこちょこ違う2種だが、一番違うのは鳴く時である。
ハシブトガラスは「カア、カア」とごく普通の「カラスの声」で鳴く。
一方、ハシボソガラスは「ガー、ゴアー」としゃがれた声で鳴く。
ただし、ハシブトガラスの音声は非常に多彩で、怒ったときなど「ガラララ......」とハスキーな声を出すこともあるから要注意だ。
ハシボソガラスが「カア」と鳴くことはない。
(キュアッというような警戒音を出すことは稀にある)。
(中略)
営巣する樹種はさまざまで、そんなことにこだわりはなさそうである。
過去の研究例を見ると、マツ、スギ、クス、イチョウといったあたりが営巣木の常連さんである。
よく生えている高い木だから、というのも理由だが、もう一つ、枝ぶりや葉の茂り具合も重要だ。
特にハシブトガラスは巣が丸見えになるのを嫌うらしく、針葉樹・広葉樹を問わず常緑樹に営巣することが多い。
(中略)
ハシボソガラスはハシブトほど神経質ではなく、春先のスカスカの落葉樹に平気で巣を作る。
... 巣をかける高さもやや異なっており、... 高槻市ではハシブトガラスで平均12.1メートル、ハシボソガラスで平均10.3メートルとなっている。
平均値の違いはハシボソガラスの方が低いところにも営巣するからで、京都でも同じ印象だった。
(中略)
抱卵はほぼ雌のみが行い、抱卵期間はだいたい20日である。
この間、雌はずっと巣に座っているが、時々出てきて文字通り羽を伸ばす。
ストレッチで体をほぐしているのだろう。
ついでに羽づくろいをして、数分休むとまた戻って卵を抱く。
この間、雌の食べる餌は雄が運んでくる。
だが、ハシブトガラスは巣の位置を秘匿する事に非常に気を遣うため、雄が巣に入ってくることはまずない。
... その点、ハシボソガラスはもっとオープンである。
堂々と雄が巣まで行って、餌をねだる雌の口の中に「はい」と突っ込む。
巣の前を雄が通ると雌は「おなか減ったおなか減ったー!」と大騒ぎをする。
雄が何かいいものを見つけて持ってきてくれない時は巣を飛び出して「それ欲しい」とねだる。
(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)
33-34、46-48、52-53ページ
『カラスの教科書』
著者: 松原始
2013年3月10日 第5刷発行
発行所: 有限会社 雷鳥社
このように書いてあったのですよ。
デンマンさんの窓の外で子育てをしたカラスはハシボソガラスだったのですか?
良く分かりましたねぇ〜。。。
だってぇ、ハシボソガラスのところを赤字にしているではありませんかァ!
その通りなのですよ。
僕は、子育てをしているカラスが「カア、カア」と鳴いたのを一度も聴いた記憶がないのですよ。 とにかく、ほとんど鳴いたためしがなかった。 だから、どうして鳴かないのか不思議に思っていたのですよ。
デンマンさんがジロジロ見ていても平気だったのですか?
そうなのですよ。 5メートルほどしか離れてないから、けっこう よく見えたのです。 でも、僕のことなど全く気にかける様子がありませんでした。
私の住んでいる田舎では「カラスが鳴くと人が死ぬ」という言い伝えがあるのですけれど、上の本の中に何か書いてありました?
あのねぇ〜、僕のお袋もそういう事を言ってましたよ。 本の著者は「まったく根拠がないわけではない」と書いてます。 つまり、通夜や葬式で人の出入りがあるのに気づいて、食べ物も出るから、それに、カラスはスカベンジャーで死肉も食べますからね。 屍骸に集まるカラスを連想して、「カラスが鳴くと人が死ぬ」と言う人が出てきた。 でも、原因と結果が逆なのですよ。 人が死んだからカラスがやって来て鳴くのですよ。
カラスがお賽銭を盗んで自動販売機に入れて鳩の餌を買って自分で食べたという話を聞いたことがありますわ。
あのねぇ〜、それはガセネタだってぇ〜。。。「どこか外国で拾ったトークン(代用硬貨)を自動販売機に入れたカラスが居た」という話が広まって、2001年2月25日に『特命リサーチ200X』という番組で“再現映像”を付けて日本テレビが放映したらしい。
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■『日本テレビ・特命リサーチ200Xでのカラス特集』
あらっ。。。 カラスってぇ、頭がいいのですわね。
確かに、頭がいいのは事実かもしれないけれど、自動販売機で買い物をして食べるというのは、SFの見すぎだと思いますよ。
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(すぐ下のページへ続く)