串カツと黒豚(PART 3 OF 4)
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渡部(昇一)は、日本の戦後には先の大戦を悪と決め付けた「東京裁判史観」と、これに反対した「パール判事の史観」があったと書いた。
これに対して西部は、この両者が対立する構図は成り立たないとして、パールは東京裁判史観に対立する史観、すなわち大東亜戦争を自衛戦争とする歴史観ではないと批判する。
そしてその根拠をこう書く。
「ガンジー『主義者』(にすぎなかった)パール判事がそんな見方をするはずがない」
なぜ「そんな見方をしていない」ではなく「するはずがない」と書くのか?
西部がパール判決書を読んでいないからである。
読みもせず、パールが「ガンジー『主義者』(にすぎなかった)」という印象だけで、「ガンジー主義者の史観に立つと、大東亜戦争を(基本的に)肯定することなどできない」はずだと、憶測だけで語っているのである。
これがあの周到で緻密な文章を書いていた西部邁か?
ネットおたくのウヨ言論じゃあるまいし、信じられないほど杜撰で不誠実な文章である。
渡部はパール判決書の内容を紹介しながら論を展開しているのに、それを一瞥もせず「ガンジー主義者が書いたものだから」だけで切り捨てて批判している!
今回の西部の文章はすべてがこのように杜撰な論理で成り立っている。
つまり、「パールは平和主義者で、ガンジー主義者で、世界連邦主義者だった。そんな者が書いた判決書は保守思想とは無縁だ。
それなのに、都合よくパールを利用している自称保守派がいる」というのだ。
(中略)
その根拠が、何一つ史料に基づかない、西部が勝手に頭の中だけで偏見を元に作り上げた妄想でしかないのだから、わしは一読して呆然としてしまった。
(注: 写真はデンマン・ライブラリーから貼り付けました。
赤字はデンマンが強調)
74 - 75ページ 『パール真論』
2008(平成20)年6月28日 初版第1刷発行
著者: 小林よしのり
発行所: 株式会社 小学館
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つまり、「パール判決書」を読んでいないにもかかわらずに西部さんは批判していると、デンマンさんは指摘したいのですか?
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その通りですよ! 小林さんが「信じられないほど杜撰で不誠実な文章である」と書いているけれど、『パール真論』の第6章「西部邁氏の誤謬を正す」を読むと“西部邁さんがいかに不誠実な人間か!”ということが充分過ぎるほど良く分かる!
でも、西部さんは東大の教授だったのですわ!
あのねぇ、東大の教授であろうが、ケンブリッジ大学の教授であろうが、ハーバード大学の教授であろうが、批判するときに問題の本(「パール判決書」)を読まずに、その本にかかわる問題を批判するなんて、やってはいけないことですよ! 人間の尊厳を自分で貶(おとし)めているようなものですよ。 小林さんは議論するために「パール判決書」を充分に読みこなしている。 本を読んで理解している人が西部さんの批判文を読めば、西部さんが本を読まずに書いた批判文章であることがすぐに判ってしまう! 西部さんは議論の相手と読者をナメている!
西部さんは小林さんによって、その不誠実さを暴(あば)かれたのですか?
その通りですよ。
つまり、料亭の女将と政治家の奥さんは、その“不誠実”さに共通するものを西部さんに感じ取ったと、デンマンさんはおっしゃるのですか?
まず間違いない! もちろん、100%の善人も居なければ、100%の悪人も居ない! 西部さんにも人に好かれる部分が間違いなくあると僕は信じていますよ。 しかし、あたかも相手に非があるようなエピソードを自分の本に書いている。 だけど、読む人は、むしろ西部さんの方に問題があると感じる。 僕はそう思う! しかし、西部さん自身は、そう思っていたようには感じられない。
要するに、読む人が読むと、西部さんは自分の欠陥を自分で書いた本の中に晒していると、デンマンさんは、そうおっしゃるのですか?
そうですよ。
分かりましたわ。。。でも、これほど長く書いてきて、一体どこが黒豚トンカツと関係あるのですか?
あのねぇ、ここまで読んでこないと僕のエピソードの意味が分からないのですよ。
あのォ〜。。。前置きはもうたくさんですから余計なことは言わずに、その面白いエピソードを細木数子さんのようにズバリ!と言ってくださいな。
分かりました。。。前橋の国道17号線バイパスのドラインブ・インで黒豚トンカツを食べて、もうあとは実家に帰るばかりでした。 オヤジもお袋も、弟たちも温泉に浸かって命の洗濯をして、しかも黒豚トンカツまで食べて満足していたのですよ。
それで。。。?
ところが、どう言う訳か?お袋が車の中で気になることを話し始めた。
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黒豚トンカツが旨いとみえて、あのお店は混んでいたわね。 私が最初にそのお店のドアを開けて入ったのだけれど、お店の人は誰もが忙しそうに立ち働いていて私に気づかなかった様子だったわ。 次にお父ちゃん(僕のオヤジ)がお店に入ったのだけれど、お店の人は相変わらず忙しそうで、お父ちゃんにも気づかないようなのよねぇ。 でも、次にあんた(僕のことです)が入ったと思ったら、お店の奥に居る人も、ウェイトレスも、皆、声を合わせるように「らっしゃい! イラッシャイ いらっしゃい! ラッシャイ!。。。」
まるで、どこかの大旦那が入ってきたように急に態度が変わったのよ! まったくアレッて、どういうのかしら? 私はどこかの、しょうもないバアさんだと思われたらしいわ。 全く無視されたのよ。 まあ。。。私が無視されたのは分かるけれど、小学校の校長先生まで勤め上げたお父ちゃんまでが無視されたのよ。。。
あんたには不思議なオーラがあるみたいなのよねぇ〜。
お袋。。。僻(ひが)むなよ。。。商売人は誰がサイフを持っているかを見極めるカンがあるんだよ! 金を払う人に対して気持ちを込めて「いらっしゃい!」と言うんだよ。
何言ってんのよ! お金を払ったのは私なのよ。
うふふふふ。。。 マジで、こういう事があったのですか?
そうなのですよ。 「押しが利(き)く」という言葉があるけれど、確かに、その人の生き様がその人の表情や姿に表われると言う事はありますよ。 僕のお袋は20代の前半に遠い親戚の池袋にある寿司屋に女中奉公をした。 女中根性が染み付いている。 僕のオヤジも小学校だけしか出ていない。 どことなく学歴がないのを“ひけめ”と思っていた影が尾を引いている。 ところが僕には、そういう“ひけめ”は全くない。 大旦那ではないけれど、人生の半分以上を一匹狼として海外で生きてきたという経験が、やっぱり僕のオーラになっているのかもしれない。
つまり、デンマンさんは自慢したいのですわね?
いや。。。自慢したいのじゃありません。 お袋の話から“オーラ”が気になっていたのですよ。 西部さんが、どういうつもりで上の2つのエピソードを本に書き込んだのか? 僕は考えさせられたのです。 小百合さんは、どう思いますか?
料亭の女将と政治家の奥さんの方に非があると、西部さんは思ったのでしょうね。 それで、西部さんは読者に自分のオーラを知ってもらいたかったのではないかしら?
多分、そうだと思いますよ。 常識として自分の欠陥をわざわざ自分の本の中に書く人は居ませんよ。 西部さんは自慢できる“オーラ”を上の2つのエピソードの中に盛り込んだつもりなのかもしれません。
。。。で、デンマンさんは西部さんの“オーラ”を見つけることができました?
いや。。。残念ながら見つけることができませんでした。 二人のおばさんは小林さんが指摘した“不誠実さ”を感じ取ったのではないか? 僕はそんな印象を持ったのですよ。
それで二人の女性は“不誠実さ”のオーラを感じてムカつき、西部さんに反抗的な態度をとったのですか?
僕は、そう思いますよ。
『黒豚トンカツ』より
(2011年3月26日)
。。。で、このエピソードと“串カツのエピソード”がどのように関係しているのですか?
あれっ。。。勘(かん)の冴え渡っている小百合さんには、僕が言おうとしている事が解るでしょう!?
余計なことはいいですから、細木数子のようにズバリ!と言って下さいなァ。
あのねぇ〜、料亭の女将が西部さんの感じの良くない“オーラ”から「ああっ、全学連が怒った」と間髪(かんぱつ)を入れずに茶々を入れたのですよ。 その言葉に対して西部さんは「ウルセエ、クソッタレ女、俺は帰るぞ」と捨て台詞を残して、西部さんは帰ってしまったのですよ。
だから、それが“串カツのエピソード”とどのように関係しているのですか?
この女将よりも、カウンタ−の中の兄ちゃんの方がよっぽど人を見る目があったのですよ。 おそらく、材料が足りなくなって、お客の中の誰かが7本だけを食べる羽目になったのです。
つまり、串カツを作っている兄ちゃんは、お客の中で7本でも我慢して勘定を払うお客を見定めたというのですか?
その通りですよ。 女将も、カウンターの兄ちゃんも 何百人、いや何千人というお客を見ていますからねぇ。。。 この人が7本貰ったらどのような反応を示すだろうか? それを目ざとく判別したわけですよ。
それで、他のお客でなく、兄ちゃんは町田康さんに白羽の矢を当てたというわけですか?
そうです。 実際、町田さんはムカついたけれど、なんか文句あるのか、というような目つきで睨みかえしてきたので慌てて目を逸らし、それから、なんというあさましい行為であろうか、左右の客の皿の上にある串の数をひそかに数えたのですよ。 でも、、仕方ないと思って、諦めて勘定を払った。
要するに、カウンターの中の兄ちゃんは料亭の女将よりも人を見る目があったというのですか?
その通りですよ。 兄ちゃんの落ち度なのに、町田さんは文句も言わずに諦めた。 僕だったら、おそらく警察沙汰になっていたか? 少なくとも、僕は8本目を食べてから外へ出ましたからねぇ。。。
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