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レダの卵 (PART 1)

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レダの卵 (PART 1)

 


(leda002.jpg)



(june001.gif)

あらっ。。。デンマンさん。。。 レダにビキニを穿かせてしまったのですか?


(kato3.gif)

いけませんか? (微笑)

上の『レダと白鳥』を描いたレオナルド・ダ・ヴィンチを侮辱することになりませんか?

あのねぇ~、教養のある人は“裸のレダ”と白鳥の絵を見てもなんとも思わないけれど、世の中には教養の無い、さらに非常識な人がいますからね。

あらっ。。。 そのような人がいるのですか?

いますよ。。。 ジューンさんもアメブロの“ファシスト管理人”を知っているでしょう?

知ってますわ。 “アメブロのファシスト管理人”と入れてGOOGLEで検索したら 14,100件もヒットしましたわァ。


(gog40114.gif)

『現時点での検索結果』



でも、上の記事はほとんどデンマンさんが書いたものじゃありませんか!



うへへへへへ。。。

デンマンさん。。。 笑っている場合じゃありませんわァ。 このファシスト管理人が教養も無く、さらに非常識な人だと言うのですか?

そうですよ。 上の記事を読めば解るけれど、僕のたくさんの記事はファシスト管理人による「写真狩り」、「言葉狩り」に遭って未公開にされているのですよ。

つまり、裸のレダにビキニを穿かせないとファシスト管理人による「写真狩り」、「言葉狩り」に遭って、記事が未公開にされてしまうとデンマンさんは言うのですか?

そうですよう。。。 これまでに、僕は何度もファシスト管理人によって「写真狩り」に遭って記事が未公開にされましたからね。

。。。で、どうして「レダの卵」を取り上げたのですか?

あのねぇ~、バンクーバー市立図書館から借りてきた『旅行者の朝食』という本を 夕べ読んでいたら次の箇所にぶつかったのですよ。


レダの卵から


(leda003.jpg)

まだ卵から孵化したてのヒヨコ同時通訳だった頃の失敗は、今でも思い起こすと苦いものがこみ上げてくる。
それは、北方領土に関する国際セミナーでの短い発言だった。
発言者は、その後ロシア連邦の外相、首相を歴任した、当時はソ連政府のブレーンとして有名だった国際政治学者P。
「皆さん、......から始めるつもりですか?」

この「......」の部分が「アブオーヴォ」と聞こえたのだが、そんなロシア語は知らない。
しかしこの部分が分からなくては訳が成り立たないのだ。
焦りまくりながらも、日露双方が、北方四島を日本、ロシアどちらが先に発見したのかという論議が熱くなている最中であること、それにPの口調が咎めだてするようだったのを思う出だし、
「皆さん、そんな話題から始めるつもりですか」
と誤魔化したところ、日本側の一部出席者が、
「そそそそそんな話題とは何事か!」
といきり立ち、わたしとしては生きた心地がしなかった。

 (中略)

さて、会議が終わってから露和辞典を調べたところ、「AB OVO」とキリール文字ではなくローマ字で記されていて≪ラテン語≫印がついていた。
意味は、「初めから」とある。
まあ、こういうときは、ラテン語かギリシャ語と相場が決まっているのだ。
ロシア語だけでなく、ヨーロッパ文明圏の言語と日本語を取り持つ通訳者たちが最も恐れていることの一つに、スピーカーがいつギリシャ語やラテン語の慣用句や有名な詩の一節を原文のまま口にするか予測不可能ということがある。

... ついこのあいだまでヨーロッパ各国では古典語はギムナジウムやリセの必須科目であった。
古典語の素養は教育を受けることのできるカーストに属する証、ステータス・シンボルだったわけで、その伝統は今も脈々と受け継がれ、スピーチの中に隙あらばギリシャ語やラテン語を潜り込ませて教養をひけらかすのは、雄弁術の一部になっている。
つまらないことを言ってもなんとなく格好がつくという効用があるので、やめられないのだろう。
日本人が漢文の故事来歴を好むのと同じ。

 (中略)

というわけで、AB OVO とはラテン語で、「卵から」という意味で、「物事を端緒から極める」とか、「原初に遡る」とか言う趣旨で使われる。
「どうでもいいことをくだくだと」というニュアンスがある。


(leda002.jpg)

もっとも、「レダの卵」伝説やホラチウスの発言などの故事来歴を知らなくとも、ABが「~から」、OVOが「卵」を意味する語であることさえ知れば、卵は生命の始まりのシンボルであるからして、「卵から始める」ということは、すなわち物語や問題を根元のそのまた根元から繙(ひもと)くと言う意味になるだろうことは、察しがつく。

(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)



11-14 ページ 『旅行者の朝食』
著者: 米原万里
2002年6月10日 第2刷発行
発行所: 株式会社 文藝春秋




上の箇所を読んでデンマンさんは感動したのですか?



いや。。。 別に感動したわけではないのですよ。

じゃあ、どうして上の箇所を引用したのですか?

赤字にした箇所に注目してください。 ジューンさんは上の赤字の箇所を読んで何か思い出しませんか?

う~ん。。。 そうですわね。 欧米でもカナダでも、会話の中にギリシャ語やラテン語を潜り込ませて教養をひけらかす人は居ますわね。 でも、結構 無意識のうちにやっている人が多いですわ。

あのねぇ~、この事で僕はジューンさんと対話形式の記事を書いたことがあるのですよ。 思い出しませんか?

そのような事がありましたか?

じゃあ、ちょっと次の絵を見てください。


(cabanel2b.jpg)



この絵は見たことがありますわ。 確か横たわっている女性はAphrodite、つまりヴィーナスですよね。

そうです。

でも、その絵の女性は全裸のはずですわ。

だから、全裸のまま貼り出すとアメブロの“ファシスト管理人”がこの記事を未公開にしてしまうのですよ。

それで上のヴィーナスにもビキニを穿かせたのですか?

その通りですよ。。。 このヴィーナスの絵は1863年、つまり、日本で言えば江戸時代に描かれたものですよ。 ヨーロッパでは、全裸のまま展覧会などで市民が眺めたのですよ。 日本では明治時代になると全裸はみっともない、恥ずかしいことだ!と言うことで明治政府は全裸の絵など公衆の面前にさらすことを許さなかった。 では、どうしてヨーロッパでは全裸の絵が許されたのか? この事で僕はジューンさんと対話形式の記事を書いたのですよ。 覚えていますか?

確か、その記事の中で上の絵も使っていましたよね。

そうですよ。 次の記事ですよ。



ラピスラズリ と

 美女アメニア

(アフロディテ神殿)

(sheet.jpg)


(cabanel2b.jpg)

Birth of Aphrodite
by Alaxandre Cabanel
(painted in 1863)



「ロブソンさん、なんだかとてもまぶしい絵を貼り付けましたね」



「すばらしいと思いませんか?ジューンさんはどんな印象を持ちますか?」

「そうですね。なんだかハッとさせられるような絵ですね」

「この絵は今から140年以上も前に描かれたんですよ。ごく最近描かれたと言っても十分に通用するでしょうね」

「私は絵のことはあまり分かりませんけれど、キューピッドを描く人は最近ではあまりいないのではないですか?私は、キューピッドが宙に浮いているのを見てイタリアのルネッサンスの頃に描かれたのではないかと思ったくらいです」

「ほォ~~~、ジューンさん、絵のことには詳しくないと言いながら、けっこう知ってますね。僕より詳しいのじゃないですか?」

「いえ、それ以上のことは知りません。でも、140年前に描かれたということはちょっと信じがたいですね」

「どうして?」

「1863年に上の絵は描かれたんでしょう?ということはアメリカでは南北戦争の真っ最中ですよ」

「このアレクサンダー・カバネルはフランス人ですよ。だから戦争とは縁がなかったんですよ」

「私が驚くのは、こんなヌードがよく問題にならなかったと思って。。。当時、アメリカやカナダでなら展示禁止になったかもしれませんよね?」

「恐らくジューンさんも、そう言うだろうなと思ってこの絵を貼り付けたんですよ」

「パリだから問題にならなかったのですか?」

「そうではないですよ。パリだから問題にならなかったんじゃなくて、この絵の中の裸の女がアフロディテだから問題にならなかったんですよ。もし、この絵の女がパリのカフェのウエイトレスだったら、大問題になったはずですよ」

「どうしてですか?」

「僕が前のページで言ったように、『オディッセイ』を調べているうちに、この大叙事詩が欧米人の原点のような気がしてきたんですよ。つまり、現代欧米文明は古代ギリシャ文明、古代ローマ文明から営々と続いていると考えている人が多いんだよね。だから、上の絵が描かれた当時、フランスやイギリスの大学では、古代ギリシャ古代ローマの古典をとにかく飽きるほど勉強させられた。そういうわけで、『オディッセイ』を暗記するほど勉強する人も珍しくなかった。つまり、ギリシャの古典やローマの古典は必須科目だったわけですよ。だから、上の絵の女がアフロディテだから問題にならなかったんです」

「そうでしょうか?」

「ジューンさん、僕がでたらめを言っているとでも思ってるの?」

「そういうわけではないですけれど。。。」


(すぐ下のページへ続く)

 

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