ん?ヒトラーはベジタリアン?(PART 1 OF 3)
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デンマンさん。。。 急に どうしてヒトラーなのでござ~ますかァ~?
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あのねぇ~、実は、3月10日にバンクーバー市立図書館でDVDを借りて映画を観たのですよ。
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■『実際のカタログページ』
上のリストの赤枠で囲んだ 701番の映画でござ~ますかァ?
そうです。
どのような映画なのでござ~ますかァ?
赤枠の中のリンクをクリックすると説明が出てきます。
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■『実際のカタログページ』
あらっ。。。 "Moloch"というドイツ語の映画なのですわねぇ~。。。
もちろん、英語の字幕が出てきます。 上の英語の説明には、次のように書いてあるのですよ。
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In an ominous fortress perched high above the clouds, everything seems in order for a reposing 24 hours.
It is the spring of 1942 in Germany and Eva Braun is the only voice that dares contradict the Fuhrer.
Eva is caught up in the complexities of a man incapable of human intimacy, making her as volcanic as her beloved Hitler.
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雲の上に聳(そび)える悪運に取り付かれたような城砦でも、今日の24時間は すべてが静謐(せいひつ)のうちに過ぎてゆくように見える。
時は 1942年、場所はドイツである。 ヒトラー総統に 敢(あ)えて たてつくのは エヴァ・ブラウン だけである。
親密な関係を持つことができない男の複雑な性格に エヴァはハマッてしまっていた。
そういうわけで、彼女は愛するヒトラー総統と同じくらいに感情が爆発することがある。
【デンマン意訳】
つまり、ベルクホーフ(Berghof)---ドイツ南東部バイエルン州のベルヒテスガーデンの近郊、オーバーザルツベルクにあったヒトラー総統の別荘での1日を描いた映画なのでござ~ますか?
そうなのですよ。 上の説明を読んで面白そうなのでDVDを借りて映画を観てみたのです。 この別荘は 第二次世界大戦中に、ヒトラーがヴォルフスシャンツェの次に多くの時間を過ごした場所なのです。 ヨーロッパ全土に位置していた総統大本営の一つとしても知られ、1935年に再建、拡張、名称変更が行われて、その後10年足らずの間、ベルクホーフ自体は機能的な総統の住居だったのですよ。
エヴァ・ブラウンも、この別荘に住んでいたのでござ~ますか?
そうです。。。
。。。で、この映画の中に ヒトラーがベジタリアンだったという場面が出てくるのでござ~ますか?
夕食の場面が出てくるのですよ。 明らかに、ヒトラーは豪華な食事には興味がなさそうです。。。 出てくるものを見ても、旨そうなものはない。 野菜スープを時間をかけて飲んでいる(英語では“食べている”)様子が出てくる。 だから、一緒に食事をしている人たちも食事を楽しんでいるようには見えない。 ヒトラーが、「今日は疲れたから、もう寝ることにする。 じゃあ失礼。。。」と言って退席すると、他の人の表情は急に明るくなって、「オイ、葡萄酒でも飲んで楽しくやろうよ!」と、雰囲気がバラ色になるのですよ。
あらっ。。。 それは面白そうでござ~ますわねぇ~。。。で、デンマンさんのコメントを見ると、映画の最初のシーンでは エヴァ・ブラウンが 一糸纏(まと)わぬ姿でダンスを踊るのでござ~ますかァ?
そうなのですよ。。。 まだ夜が完全に明け切っていない靄(もや)がかかったベルクホーフ(Berghof)のテラスの寝椅子で 全裸のエヴァ・ブラウンが、ダンスのような動きをしながら、テラスをそぞろ歩くのですよ。 このシーンが少なくとも10分ぐらい続くのです。
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あらっ。。。 それを目当てに デンマンさんは映画を観たのでござ~ますかァ?
いや。。。 そのようなシーンが出てくるとは、どこにも書いてなかったから、意外でしたよ。 でも、実際のエヴァ・ブラウンが 一糸も纏(まと)わぬ姿でダンスをしたとは、僕は素直には考えられなかった。 あれは、観客を映画に惹きつけるための、監督のトリックだと思いましたねぇ~。
つまり、この事が言いたかったわけでござ~ますかァ?
違いますよ。。。 あのねぇ~、僕はかつて 米原万里さんが書いた『旅行者の朝食』という本を読んだことがある。 その中に次のようなことが書いてあったのです。
元気にしていたヒヨコがみるみる弱っていき、死んでいく様子を何もしてあげられずにただ見守るのは、辛くて切ない。
3日目に生き残っていたのは一羽となった。
ピーと名付けたこの子は元気で体も大きくなってゆく。
立派な鶏に育ってくれるかもしれないという希望が湧いてきた。
家に来てから1週間目に、さかんに騒ぐので、檻の中が窮屈になったのだろうと、庭に出してやった。
ピーは大喜びで庭の中を徘徊する。
クチバシで地面を突いたかと思うと、もうクチバシには虫やミミズをくわえている。
得意な様子だ。
いきなり黒っぽい塊が目の前をよぎった。
キャーッと泣き叫ぶしかなかった。
よく見かける野良猫がピーをくわえて走り去っていった。
こうしてヒヨコは一羽もいなくなった。
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それから丸々1年間、わたしは鶏肉も卵も一切食べられなくなった。
掌の上で息絶えていったヒヨコたちの姿が二重写しになって、とても口に運べない。
朝の生卵はもちろんのこと、オムライスも茶碗蒸しも卵入りのホットケーキも口を付けられなくなってしまった。
1年ほどして、ある日カステラを頬張っていたら、母が言った。
「あら、それは卵がいっぱい入っているのに」
とたんにヒクヒクと痙攣しながら死んでいったヒヨコたちの面影が目の前にちらついた。
涙が溢れてくる。
それでもわたしはカステラを食べ続けた。
毒を喰らわば皿までの心境だった、というよりも、ものすごく美味いカステラだったのだ。
ヒヨコたちの面影にカーテンを下ろす術をそのとき会得した。
(中略)
今でも肉料理や卵料理を前にすると、ほんの一瞬だが、ヒヨコたちや獣たちの姿が目前をよぎる。
みな、それは悲しそうな目をしている。
なのに、次の瞬間にはムシャムシャと美味しく食べている自分が、ときどき怖くなる。
もっと心優しく意志の強い人々はベジタリアンになるのだろう。
ヒトラーもベジタリアンだった。
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(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)
19-21ページ 『旅行者の朝食』
著者: 米原万里
2002年6月10日 第2刷発行
発行所: 株式会社 文藝春秋
あらっ。。。 米原万里さんは「ヒトラーはベジタリアンだった」と書いているではござ~ませんかァ!
。。。でしょう!? 僕はヒトラーについては、ずいぶんと映画を見たり本を読んだりしていたのだけれど、これまでに一度もヒトラーがベジタリアンだったということに気がつかなかったのですよ。
でも、もしかして米原万里さんの思い違いではござ~ませんか?
僕もそう思って、手っ取り早く『ウィキペディア』で調べてみたら次のように書いてありましたよ。
(すぐ下のページへ続く)