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地球の平和(PART 3 OF 4)

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地球の平和(PART 3 OF 4)


軍隊のない27の国々

アンドラはフランスとスペインの間のピレネー山中にあり、1278年以来一度も軍隊を持ったことがなく、1992年憲法には「700年の平和の旅」とある。 世界一古くから軍隊を持たない国家である。



アンドラの国旗

サンマリノは世界最古の共和国であり、16世紀頃から軍隊を持っていない。 ティターノ山頂に城塞都市を築いて、外敵とは国民一丸となって戦ってきた。 



サンマリノの国旗

モナコは1740年頃から軍隊を持っていない。



モナコの国旗

ルクセンブルクは1867年に非武装中立となたが、二度の大戦に際して占領された経験を持つ。 現在はNATOに加盟しているが国軍はない。



ルクセンブルクの国旗

アイスランドは1918年に独立した際に非武装永世中立国になった。 その後、永世中立を放棄したが、今日にいたるまで非武装である。



アイスランドの国旗

ヴァチカンは1929年に独立国家となった時から軍隊を持っていない。



ヴァチカン市国の国旗

第二に、軍隊が国民を殺害したために廃止した国がある。 コスタリカは、1948年の内戦のため国民同士が殺しあう悲劇を体験したので、1949年憲法で常備軍を廃止した。



コスタリカの国旗

ドミニカ国は、1981年に軍隊の一部と連携した反政府勢力がクーデタ未遂を起こし、国民を殺害した。 政府は軍隊廃止法案を議会に提出し、これが採択されて軍隊が廃止された。



ドミニカの国旗

本書では割愛したが、ハイチは悲惨な内戦に国連が介入して武装解除される中、国軍が廃止された。



ハイチの国旗

軍隊が市民を守るというのは、もともと幻想にすぎない。 近現代史を振り返れば、市民を守らなかった軍隊や、市民を殺害した軍隊は枚挙に暇がない。 沖縄の日本軍を想起すればいい。 市民に被害を与えなかった軍隊、市民を守った軍隊は果たしてどれだけあるだろう。 軍隊の幻想に気づいたコスタリカやドミニカ国は、軍隊を廃止した。

 (中略)

国家に軍隊は不可欠か

軍隊のない国家といっても、小国が多く、経済力がないうえ、地政学的に見ても必要性がないので軍隊を保有していないだけであって、他の諸国にとって参考にならないのではないか。 とりわけ日本にとって参考にならないのではないか、という見解がある。
しかし、問いの立て方そのものが間違っている。
第一に、国連加盟国192カ国のうち25カ国が軍隊を持たないという事実そのものに大きな意味がある。
「国家は軍隊を持つのが当たり前」という通念がまったく誤りであることを明白に実証したからである。
これまで、軍隊を持たない国家といえばコスタリカしか知られていなかった。 コスタリカ1国だけなら、例外という議論もありうるだろう。 しかし、議論の前提となる基礎知識が誤っていたのだ。 個別の諸国が参考になるか否かではなく、これだけまとまった数が存在していることに意味がある。 憲法第九条に関する議論の中で、「国家は軍隊を持つのが当たり前である」とか、「軍隊がなければ国家とは言えない」といった乱暴な主張が飛び交っているが、こうした言説には根拠がない。
軍隊がなくても国家は維持・存続できる。 問題は、どのように平和外交を駆使して地域の安全保障を確立するかである。

軍隊のない国家が増えてきた

このように軍隊のない国家は徐々にではあるが増えてきた。 現在いくつあるかよりも、増えてきたことが重要である。 軍隊の問題に関しても世界は普遍ではなく、変わりうるのだ。

第九条の「輸出」

第四に、「軍隊のない国家に学ぶ」という側面だけを問題にするのはいかにも不十分である。 憲法第九条があるのだから、本来、日本は諸外国に学ぶ立場ではないはずだ。 諸外国が憲法九条に学んできたかどうかが問題である。

逆に言えば、日本政府が憲法第九条を守ろうとせず、骨抜きにしてきた歴史、そして「憲法第九条を世界に輸出してこなかった不作為」を反省する必要がある。 というのも、軍隊のない国家は、憲法第九条と何の関係もないからである。 それぞれの歴史の中で軍隊のない状態になってきたのである。 「憲法に軍隊を持たないと書いてあるのに軍隊を持っている世界で唯一の国」という恥ずべき状態を作り出してきた責任を考えるべきである。

 (中略)

憲法改悪をもくろむ強引な政治が続いているが、憲法第九条こそが現代平和主義の柱石である。 国内における平和運動・護憲運動をいっそう活性化させ、憲法第九条の輝きを世界に発信していくことが重要である。

(注: 国旗はデンマン・ライブラリーから貼り付けました。
赤字はデンマンが強調のため施しました。)



244 - 251ページ 『軍隊のない国家』
著者: 前田朗
2008年9月10日 第1版第4刷発行
発行所: 株式会社 日本評論社

『軍隊のない国』に掲載
(2011年3月21日)




でも「軍隊のない国」ってぇ、机上の空論だと信じている人も居るでしょう?



机上の空論ではないでしょう! 現実に軍隊のない国が27もあるんだから。。。

でも、第九条の「輸出」なんてぇ、絵に描いた餅だと信じている人も多いと思うわ。

いや、決して絵に描いた餅じゃありませんよ! ちゃんと現実の餅を食べている人たちも居るのですよ。 (微笑)


(市民が)軍隊のない地域を(作れ!)

日本政府が憲法第九条を守らないのであれば、市民は第九条をどのように活用すればいいだろうか。
一つには、地域で第九条を活用することである。
無防備地域宣言運動はその好例である。

無防備地域宣言は、国際慣習法として認められてきた無防備地域の設定であり、1977年のジュネーヴ諸条約第一追加議定書59条にも根拠規定がある。
武力紛争から民間住民を守るために、国際人道法の軍民分離原則を具体化した規定の一つである。
要するに軍隊のない地域であり、無防備地域を攻撃すると戦争犯罪とみなされる。

無防備地域宣言運動は1980年代に林茂夫によって提唱されたが、日本政府がジュネーヴ諸条約第一追加議定書を批准していなかったので、広がらなかった。
日本政府が第一追加議定書を批准し、効力を生じたのは2005年2月である。 そこで再び運動が始まった。
自治体住民が無防備平和条例案を作成して、条例制定を要求する直接請求運動を展開した。
有権者の50分の1の署名を集めて提出すると、その審議のために議会が開かれる。

2004年の大阪市を皮切りに、札幌市から竹富町(沖縄県)まで、全国20箇所を越える自治体住民がチャレンジしてきた。
無防備平和条例の制定に賛成意見を付した首長は、国立(くにたち)市長と箕面(みのお)市長である。



大学通りの銀杏並木 (東京都国立市)



箕面の滝 (大阪府箕面市)


軍隊のない世界へ

世界には軍隊のない国家がたくさんある。 軍隊なしで安全保障を追及する知恵と創造性のある外交こそ重要である。 第九条は、60年も前に、そうした思想を世界に指し示した。 憲法第九条は、単に戦争放棄や軍備放棄だけではなく、人類社会のあり方そのものの変革を課題として打ち出している。 その第九条を世界がえらび始めた。

(注: 赤字はデンマンが強調)



253 - 255ページ 『軍隊のない国家』
著者: 前田朗
2008年9月10日 第1版第4刷発行
発行所: 株式会社 日本評論社




でも、塩野七生さんに言わせれば「こんな事をしたって無駄よ」と、言うでしょうね!?



あのねぇ〜、歴史の流れを見てください。 マハトマ・ガンジー、マーチン・ルター・キング牧師、ダライラマ14世、それにアウンサン・スーチー女史、。。。非暴力を掲(かか)げて市民運動を繰り広げた人、また現在も活躍している人たちが居るのですよ。

つまり、軍備を増強して「二度と負け戦をしない」という愚行よりも無防備地域宣言をする方が世界の平和のため、人類の幸福のためによっぽど意義あると言うことなのォ〜?

その通りですよ!


 (すぐ下のページへ続く)


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