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味噌がビミョーな田楽(PART 1)

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味噌がビミョーな田楽(PART 1)


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ガイドブックによると、栃木市はなかなか風情のある町のようである。
よし行ってみよう。
上野駅から普通電車に乗車し、途中、小山で乗り換え、栃木駅に向かう。


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電車の隣の席では、ふたりの女子高生が大きな声でしゃべっていた。

女子A 「ハウルの動く城ってさぁ、お婆さんになるけど、最終的には女の子になんのね。 でも髪の色は変わらないんだよね、グレー」
女子B 「えービミョー」
という会話。
女子Bの「ビミョー」がなんか可笑しくて、わたしも「ビミョー」って使ってみたくなってしまった。

 (中略)

塚田歴史伝説館には、人間そっくりの動きをするハイテクロボットが設置されているが、展示の構成は学園祭みたいでキッチュである。
三味線を弾くおばあさんのロボットがリアルでちょっと怖かった。
売店の人が、
「田楽おいしい店がありますよ」
と教えてくれたので、行ってみることにする。


(dengaku4.jpg)
油伝商店


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油伝(あぶでん)味噌という、コクと甘味のある黒い味噌を使った田楽が食べられるというお店は、なんだか歴史がありそう。


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店内は観光客らしき人たちで混んでいた。
おばあさんと、その娘さん(60歳くらい)という客と同じテーブルになり、おばあさんに「学生さん?」などと聞かれる。

ふたりは群馬県に住んでいるらしいのだが、ここの田楽が大好きでわざわざ食べにきたのだそう。
わたしはというと、改めてわかったけど、田楽というものがあまり好きではないかも。
甘い味噌がビミョーというか。
だけど、頼んだこんにゃく田楽は全部食べたし、田楽の中では、ここのはかなり美味しいんだと思う。


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店を出て、ふたたび自転車で街をぶらぶらしていると、さきほどのおばあさんたちが車でわたしを追いこしながら「お元気でー!」と手を振ってくれた。
お元気で。
きっと、もう会うことはない。 少し切ない気持ちになる。

(赤字はデンマンが強調のため。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)



130-132ページ
『47都道府県女ひとりで行ってみよう』
著者: 益田ミリ
2008年6月25日第1刷発行
発行所: 幻冬舎




デンマンさんは田楽が好きなのですか?



カナダではめったに食べられないものですからね。 上の本を読んで急に懐かしくなったのですよ。

作る気になれば簡単に作れるでしょうに。。。?

材料は何とか揃えることができるけれど手間がかかりますよ!

当然ですわ。 手間を省いたら出来合いのものしか食べられませんわ。

だから、栃木市の「油伝商店」の支店がバンクーバーにあればいいなァ〜、と思ったのですよ。

デンマンさんが投資して田楽のお店をバンクーバーに出せばよいではありませんか?

どうかな。。。? 僕はあまり儲からないと思いますよ。

どうして。。。?

あのねぇ〜、吉野家の牛丼がアメリカに進出したのは、もう20年ぐらい前ですよ。 僕はニューヨークで食べたことがあります。 最近、バンクーバーにも、そのものズバリ!の「Gyudonya(牛丼屋)」が店を出したのですよ。

あまりお客さんが入っていないのですか?

言わばバンクーバーの銀座であるロブソン・ストリートにあるのだけれど、中心から外れたバンクーバー中央図書館の近くなのですよ。 お客さんが一杯に入っていたのを見たことがない。 近くにカナダのファーストフッドの店“Tim Hortons”があるのだけれど、こちらの店は、いつ店の前を通ってもお客さんが入ったり出たりしている。


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そのTim Hortons というのはマクドナルドのようなお店ですか?



似たようなものだけれど、もともとはドーナツを売っていた店なのですよ。 やっぱり、カナダ人には牛丼よいりもビーフ・ハンバーガーの方が口に合うようです。 だからねぇ、田楽の店を出しても、珍し物好きの一部のカナダ人にしか受けないと僕は思うのですよ。

田楽のお店を出してみなければ判りませんわ。

小百合さんがバンクーバーにやって来て田楽の店を出したらどうですか?

子供がみんな独立したら考えてみますわ。 ところで、ビミョーをわざわざ強調していますけれど、デンマンさんは、それほどビミョーが気になったのですか?

いや。。。「微妙」だということは分かったけれど、女子高生が思わぬところで使っていたので、それを耳にした益田ミリさんにとって可笑しかったのでしょうね。 僕は「ビミョー」よりもキッチュが気になったのですよ。 僕は「キッチュ」を「キュート(可愛い)」というような意味で使うものだと思っていた。 でも、上の文章の中では、そのように訳すと、なんとなく可笑しい。 どちらかと言うと“キモい”のように使われているのではないか。 それで調べてみたのですよ。


キッチュ


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"kitsch"はドイツ語で、まがいもの、まやかし、俗悪などを意味し、低俗でごてごてした悪趣味なものを指す。
フランス語では「デテステ」が類似語。

俗悪なもの、まがいもの
本来の目的とは違う使い方をされるもの

ファッション用語での意味

上品、シックに対して悪趣味なものを指す。
服飾では、けばけばしい色彩、装飾過剰、安物っぼい素材などから連想されるイメージを指す。

1970年代頃から上品でシックな感覚と相対して現れた。
ロンドンなどでもストリートファッションとして登場。

1980年代に、パリのお嬢様ルックB.C.B.G(ボンシック・ボンジャンル)など高級ブランドにジーンズを合せたリッチ&カジュアルなスタイルが流行した。
上品なファッションに飽き足らない若者たちが、遊び半分でキッチュ感覚を取り入れる。

人間に対しては

「現代的で可愛い」や「現実離れしている」という意味でほめ言葉で使われる。



出典: 『はてなキーワード』




「低俗でごてごてした悪趣味なもの」、つまり、「キモい」に近い意味もあるのだけれど、「現代的で可愛い」という意味もあると知ってホッとしたのですよ。 僕の使い方も間違ってないと。。。



それで、わざわざジューンさんを登場させたのですか?

そうですよ。 うししししし。。。





ジューンさんはクールで、現代的で可愛いでしょう!?



デンマンさんは、ジューンさんがよっぽど気に入っているのですわね?

いけませんか? うへへへへへ。。。

つまり、この事が言いたいために、わざわざ田楽を持ち出したのですか?

もちろん、違いますよ。 それだけじゃありません。 実は、上で引用した挿話は栃木県の旅の一部です。 上の旅には続きがあって、それが群馬県の旅と関連しているのですよ。 その部分を読んでみてください。


着いたのが夕方だったので、ぶらっと高崎駅周辺を散歩し、適当に惣菜を買ってホテルでテレビを見ながらの夕食。
楽しい。
店を探したり、かってのわからないところで緊張しながら食べるのが、最近ますます嫌になってきた。
旅先で何を食べたってわたしの勝手だもーん、と開き直りたいが、まだ「これでいいのか?」という思いもある。
わたしは普段から保守的な人間だと思う。
「いつも食べに行く店で、どんどん友達が増えちゃって!」
などというオープンな生活スタイルなど、絶対に考えられない。
知らない客同士がしゃべるなんて、想像しただけで疲れる……。
嫌。
うらやましくない。
いろんな人に会って、人脈を広げ、自分を高めるチャンスをつかむ。
わたしにもやればできるのだろうか?
なんか寿命が縮まりそうだなぁ。
チャンスと寿命だったら、やっぱり寿命のほうが大事だよなぁ。
などと、群馬県と関係ないことばかり書くなっつーの!

 (中略)

去年、栃木県にひとり旅したとき、田楽屋で相席になったおばあさんたちが、
「群馬県の館林のつつじは、とってもきれいですよ」
とわたしに一生懸命、説明してくれたのだ。
わたしは、ほんの社交辞令で、
「じゃあ、ぜひ見に行きます!」
と答えていたんだけど、本当に行ってみる気になった。
知らない客同士が店で話すのなんか嫌い、と書いたものの、去年の栃木旅行では、初対面のおばあさんたちとわたしはおしゃべりをしていた。
適当に愛想よくしておけばよいという気持ちだったのだが、わたしは、そのおばあさんたちとの約束を果たすため館林に向かう。


(tateba90.jpg)

高崎から両毛線で伊勢崎まで行き、乗り換えて館林へ。
つつじが岡公園のつつじは、きれいに咲いていた。
人が多くてゆっくり見られなかったけど、おばあさんたちとの約束を守ったと思うと、つつじは、もうどうでもよかった。

(赤字はデンマンが強調のため。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)



154-156ページ
『47都道府県女ひとりで行ってみよう』
著者: 益田ミリ
2008年6月25日第1刷発行
発行所: 幻冬舎




あらっ。。。 益田ミリさんはつつじが岡公園へ行かれたのですわね。



そうですよ。 僕は思い込みで記事の中では「つつじヶ丘公園」と書いていたのですよ。 上の文章を読んで改めて調べてみたらつつじが岡公園が正しいのですよ。

その事を言うために館林の旅を取り上げたのですか。

いや。。。そうじゃありませんよ。 「つつじが岡公園」は僕にとって忘れられない場所だからですよ。

マジで。。。?

やだなあああァ〜。。。小百合さんには「つつじが岡公園」の思い出はないのですか?

館林は私が生まれ育った町で、小さい頃からたびたび訪れているので、なんだかあまりにもありふれた風景になってしまって特に心に残る思い出はありませんわ。

そういうものかなァ〜。。。? 僕にとって「つつじが岡公園」は小百合さんとの忘れられない思い出の場所なのですよ。 小百合さんも僕の記事を読んだでしょう?

ええ。。。読んだ覚えがありますわ。

もう忘れてしまったのですか?

読んだ覚えがあるから忘れてはいないのですわよ。 うふふふふふ。。。

ぜひもう一度読んでくださいよ。


11月に桜が咲いている!



館林駅に着くと小百合さんが迎えに来てくれて「花山」へ行きました。
「花山」と呼ぶのは地元で育った40代の人たちが、そう呼ぶらしい。
館林市のガイドマップを見ると「県立つつじが丘公園」と書いてある場所です。



五月ごろ来れば、きれいな“つつじ”がたくさん咲いているのでしょう。
当然のことですが、11月なのでつつじは咲いていなかった。
ところが桜が咲いているのですよね。

11月に桜が咲いている!
ビックリしました。
上の写真ほど見事なものではありませんでした。
でも、間違いなく桜の一種です。
小百合さんもビックリしていました。
名前は分かりません。

バンクーバーやバーナビーの植物園のように名札をつけてくれればいいのに!
小百合さんは、そう言っていましたね。
ごもっともです。



旧秋元別邸(最後の館林藩主・秋元家の別邸)の菖蒲園(しょうぶえん)のすぐそばにある橋の近くに白鳥が3羽居ました。
泳ぎ疲れたのか3羽とも岸辺に上がって草原(くさはら)の上で羽を繕(つくろ)って、これから昼寝するところでした。
小百合さんは近寄るのが怖いと言うのですよう。

40代の女性の怖さを持っている小百合さんにも
こういう童女のような繊細さがあるのですよね。
小百合さんの“かわゆい”ところです。

僕は50センチまで近寄りましたが
その白鳥たちも、人に慣れているようで
全くビクビクしませんでした。

旧秋元別邸の近くに田山花袋が9歳から14歳まで住んでいたという旧居が保存されていました。



田山花袋の『田舎教師』を読んだ事がありますが、僕の記憶では、主人公は羽生の田舎にあるお寺に下宿して僕の母校・熊谷高校(当時の旧制熊谷中学)に毎日、朝4時から5時ごろに起きて4時間歩いて通っていた、というような事を読んだことがあります。
初めて読んだ時、信じがたい事をしていたものだと驚きました。
僕が通ってた頃、校長室の前の廊下にガラス張りのケースがあって、その中に旧熊谷中学校第三回卒業生の写真の中に、小林秀三(林清三のモデル)の少年時代の姿を見たことがあります。

小百合さんが卒業した館林女子高校は田山花袋の旧居から歩いて5分のところにありました。
女子高時代、校門の近くの食べ物屋さんでラーメンだか、うどんだか、あるいはカップヌードルだったか。。。
それを買って戻って来る時に校門のすぐ前で、それをぶちまけてしまい、後片付けをしなければと思ったけれど、結局、何もしないでそのままにして教室に戻ってしまった。
そんな事をいつだったか小百合さんが書いていました。

12月にバンクーバーに戻るまでに
小百合さんの面白いエピソードが、もっともっと聞けるような気がするのです。
楽しみにしていま〜♪〜す。

では、小百合さんに捧げる短歌を。。。


 
 
館林
 
 
季節外れの
 
 
桜咲き
 
 
かわゆいきみに
 
 
胸ときめかせ
 
 





『愛しい人(2008年11月14日)』より


 (すぐ下のページへ続く)


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