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チョコレートと世界銀行(PART 1)

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チョコレートと世界銀行(PART 1)






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5年も前になると思うが、ニューヨークからイギリスのサザンプトンまで、クイーンエリザベス2世号に乗って行ったことがあった。
その船の廊下で、ポルトガルかスペイン人の34,5歳の若い夫婦とすれ違ったときに、「休暇ですか?」と声をかけたのがきっかけで立ち話になった。
「ええ、帰郷休暇なんですよ」
「ほう、ヨーロッパからアメリカに来て働いているの?」
「ええ、ワシントンにある世銀です」
「船で帰られるとは優雅ですね。 もう昼食だから一緒に行きましょうか?」とこちらが誘うと、彼らは私たちとは違う方向に行こうとした。
「1等に乗っているので食堂は向こうなのです。 お恥ずかしいのですが、世銀の決まりで帰郷休暇では1等と決まっているのです。 貧乏な国を援助する銀行なのに変でしょう。 飛行機でもファーストクラスなんです。 値段が同じなので、今回は船にしたんです」と、夫のほうが当惑をした顔つきで言った。

(中略)


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さて、私の好奇心から、前述の帰郷休暇で遣う航空費の平均運賃を出してみた。
ワシントンから東京、欧州の主要都市のファーストクラスとビジネスクラスの差、またファーストクラスとエコノミークラスの差を帰郷休暇する行員の2500人分で掛けると、ビジネスクラスでは 6、572、500ドル、全員がエコノミークラスを遣えば、13、035、000ドルの節約になる。
あの莫大な世銀の資金からすれば、大海の一滴にすぎなく見えるだろうが、援助している国民の、たとえば、マリ共和国の一人当たりの平均年収600ドルで換算すると、エコノミークラスでは 21、725人の年収にあたり、ビジネスクラスにしても 10、954人分になる。

アメリカ人の友達が「世銀とペンタゴンとの違いは、ペンタゴンは人を殺す機関であるということだけだ」と言ったが、永い目で見ると、世銀も大企業の側に立って真綿で人の首を絞めているのかもしれない。
夫は「ケネディ、ジョンソン大統領の下でペンタゴンのトップをしていて、その後世銀の総裁になったのがマクナマラだよ。 20年後にべトナム戦争は間違いだったとやっと認めた男の銀行なんて、どこかおかしいんじゃないかね」と言う。

 (中略)

2001年2月25日の『LAタイムズ』に「世界銀行の総裁ウォルフェンソンとIMFの専務理事のケーラーがサハラ南部を訪れ、過去40年の、自分たちが何でも知っているからこちらの言う通りにせよという政策は失敗だったと認めた。 貧しいものはより貧しくなり、富める者はより富むという状態になっている。 これからはその国の人の言うことにもっと耳を傾けるべきだと言った」とあった。

(赤字はデンマンが強調のため。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)



164-165ページ、168-169ページ
『なんや、これ? アメリカと日本』
著者: 米谷ふみ子
2001年6月5日 第2刷発行
発行所: 株式会社 岩波書店




ケイトーは、世界銀行の職員がファーストクラスで旅行することにムカついてるのォ〜?



あのねぇ〜、世界銀行へは、日本、アメリカ、カナダを含めたG7の国が主に出資しているのですよ。 加盟国は184カ国だけれど。。。そのお金はそれぞれの国の国民の税金ですよ。 つまり、僕やシルヴィーが払った税金もその出資金の中に少ないけれど含まれている。

だから、どうだと言うの?

やだなあああァ〜。。。僕は日本に帰省する時にはエコノミークラスで帰るのですよ。 ファーストクラスには乗らない主義ですよ。

お金がないからでしょう? うふふふふふ。。。

あのねぇ〜、無理すればファーストクラスにも乗れますよ。 でもねぇ、バカらしいじゃないですか! 最近のエコノミークラスは以前と比べればずっと快適になってきた。 ファーストクラスのチケットはエコノミークラスの2倍以上でしょう! ファーストクラスを使っているほとんどの人は自分の財布からチケットを買っているわけじゃない。 社用族ですよ。 だけど、世界銀行の職員が社用族の真似をされたら、税金を払っている立場の者としていい気持ちになれるわけがない! シルヴィーだっていい気持ちはしないでしょう?

でも、世界銀行で働いている人たちにしてみれば社用族だけがファーストクラスに乗って、自分たちがエコノミークラスだとしたらいい気持ちがしないじゃない?

あのねぇ〜、貧しい国を援助する立場にある世界銀行の職員がファーストクラスで旅行するということは、貧しい国の人が餓死しようとしているのに、帝国ホテルの高級レストランで毎日たらふく美食を食べているようなものですよ。 そのような情景を目にしたら不快極まりないですよ。 少なくとも、僕にはそのような真似はできません。

マジで。。。? 

やだなあああァ〜。。。貧しいアフリカの国で餓死しようとしている人たちを横目で見ながら、シルヴィーは高級レストランで、最高級のボルドーのワインを飲みながらフィレミニヨンを食べることができるの?

そこまであつかましくないけれど、でも、会社のお金や銀行のお金を使ってファーストクラスに乗れる身分には憧れるわ。

あのねぇ〜、確かにシルヴィーの言う事も全く分からないわけじゃないけれど、世界銀行の総裁ウォルフェンソンさんもサハラ南部を訪れ、「過去40年の、自分たちが何でも知っているからこちらの言う通りにせよという政策は失敗だった。 貧しいものはより貧しくなり、富める者はより富むという状態になっている。 これからはその国の人の言うことにもっと耳を傾けるべきだ」と言ったのですよ。 つまり、貧者の身になって考えなければだめだと認めたのですよ。 それなのにファーストクラスはないでしょう!?

でも、総裁ウォルフェンソンさんがエコノミークラスで旅行したら可笑しいでしょう?

あのねぇ〜、1981年に84歳で亡くなられたけれど、僕が子供の頃に京都府の知事を長いことやっていた蜷川(にながわ)虎三さんという人物が居たのですよ。 1950年から1978年まで7期、京都府知事を勤めた。 この人は京都帝国大学経済学部を卒業し、後にドイツに留学した。 でも、教授に昇格するのはずっと遅くて1942年だった。 終戦の年、1945(昭和20)年に経済学部長となるのだけれど、翌年、戦争責任を感じて自ら辞職するという、その当時では潔(いさぎよ)い態度だった。 

。。。で、その人がどうだと言うの?

大学の先生から地方政界に出て京都府知事になったのだけれど、決して贅沢な生活に甘んじることがなかったというのですよ。 僕も週刊誌に載った蜷川さんの自宅の写真を見たけれど、2階建ての質素な家でしたよ。 とても京都府知事の家という感じじゃない。 社会的な地位と贅沢とは本質的に別物ですよ。 だから、世界銀行の職員だからファーストクラスでなければだめだという規則は、まったく納税者をバカにしている規則なのですよ。 だから、世界銀行はいい加減なことをやっている。 それで、心ある総裁は自分たちがやった政策が失敗だったと認めたのですよ。

ケイトーは結構、真面目な事を言うのね?

あれっ。。。シルヴィーは僕のことをいい加減な男だと思っていたの?

うふふふふふ。。。そう言う訳じゃないけれど、あまり真面目な事を言うと読者がムカつくかもしれないわよ。。。ところで、世界銀行とチョコレートがどのように関係しているのよ?

ちょっと次の小文を読んでみてくださいよ。


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コートジボワール最大の都市アビジャンから延びる幹線道路は、地図には2車線の道路と記されている。
しかし市街を離れるとすぐ、車一台やっと通れるほどの幅しかないでこぼこ道になってしまった。
絡まる蔓(かずら)や低木が両側から迫り、トンネルのようにうっそうとしている所を通り抜けていく。
ここでは雨が絶えない。
むっとする霧から激しい雷雨、そしてまた霧へと変わる果てしないサイクル。
ジャングルが目の前で生い茂っていくのが見えるようだ。
...
世界のカカオの半分近くが、この高湿な西アフリカの熱帯雨林から来ている。
ここを出たカカオはやがて、世界のチョコレート・ファンの食生活を彩り、心を潤すお菓子に生まれ変わる。
...
有史以来、世界で何百万人もの人間がチョコレートのとりこになってきた。
子供たちはお小遣いを握りしめて一かけらのチョコレートを買いに行き、女性たちの中にはセックスより上等のチョコレートの方がいいという人もいる。
 ...
チョコレートは、誘惑そのものだ。
わけもなくやみつきになる。
だからこそ巨額の貿易が、そして一つの産業が成り立っている。
この産業は飽くことを知らないかのように原料を求める。
業界を支配する大企業の命運は、遠い西アフリカの農園と、そこで手間隙かけて発酵・乾燥されたカカオ豆を集荷するため日々の熱帯林の道なき道を行く仲買人たちにかかっている。
 ...


(cacao2.jpg)

この地域が世界市場向けのカカオの生産地になったのは比較的最近で、1970〜80年代のことだ。
コートジボワールの建国の父、フェリックス・ウーフェ-ボワニ(1905-1993)。
慈悲深い独裁者ウーフェは、この肥沃な農地から黄金にも匹敵する作物が取れることに気がついた。
彼は、フランスから独立を勝ち取ったばかりの国を、西アフリカ経済の原動力にしたかった。
ジャングルをエデンの園に変え、国民が自らの労働の成果を享受できるようにすると1960年代に表明。
この建国のビジョンは軌道に乗り、しばらくの間コートジボワールは、アフリカで最も安定し、繁栄を謳歌する国になった。
それを可能にしたのは何よりも世界市場へのカカオの供給だった。
しかし、今では何もかも様変わりした。
...
(コートジボワールの)人たちは、自分たちの作物についてなにも知らない。
(ジャーナリストの)アンジュは、ノートのページを破りとって筒状に丸めて見せ、欧米ではカカオを粉にして砂糖をたっぷり加え、このくらいの大きさのチョコレートを作るのだと説明した。
とても甘くておいしくて、ミルクやピーナッツが入っていることもある。
欧米の子供たちは、よくおやつにもらうのだ、と。



アンジュが、そのチョコの値段は約500CFAフラン(約120円)だと続けると、信じられないふうに、目を丸くした。
そんなちっぽけなお菓子にそんな大金。
それだけあれば、立派な鶏でも米1袋でも買える。
少年の日給、3日分よりもまだ多い---もちろん、給料が払われていればの話で、払われているとは到底思えないが。

私の国の子供たちは、一つのチョコレートを2,3分で食べてしまうと説明すると、少年たちは本当に驚いている。
何日も苦労して働いて作られたものを、地球の反対側では一瞬で食べてしまうのか。
...
私の国には学校へ向かいながらチョコレートをかじる子供がいて、ここには学校にも行けず、生きるために働かねばならない子供がいる。
少年たちの瞳に映る驚きと問いは、両者の間の果てしない溝を浮かび上がらせる。
なんと皮肉なことか。
私の国で愛されている小さなお菓子。
その生産に携わる子供たちは、そんな楽しみをまったく味わったことがない。
おそらくこれからも味わうことはないだろう。

(赤字はデンマンが強調のため。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)



10-17ページ 『チョコレートの真実』
著者: キャロル・オフ (北村陽子・訳)
2007年9月1日 第1版第1刷発行
発行所: 英治出版株式会社 




なるほど。。。チョコレートの原料、カカオ豆を栽培している農園で働かされている少年たちはチョコレートを見たことも食べたこともないのね。



僕も知りませんでしたよ。 でも、アフリカでは餓死している人たちがいると言うのだから、チョコレートを見たことも食べたこともない少年が居るのも理解できますよ。

だけど、上の話には世界銀行が出てないじゃない?

あのねぇ〜、世界銀行では、出資額でG7各国の理事による会議での投票力が決まるのですよ。 つまり、ある国の投票力が強まれば、その国の企業に、世界銀行が承認したプロジェクトの契約を持ってゆくことができる。

。。。で、どの国が投票力が強いの?

当然のことだけれど、アメリカですよ。 1994年-1995年度の G7の国々の企業への契約金は次の通りです。


アメリカ: 7億7900万ドル

フランス: 5億ドル

イギリス: 4億2850万ドル

ドイツ: 2億9600万ドル

日本: 2億900万ドル

カナダ: 1億2800万ドル

イタリア: 1億2450万ドル




それだけの出資金も出しているのだろうけれど、アメリカがダントツで契約金を分捕(ぶんど)っている。 ちなみに、世界銀行の総裁にはアメリカ出身者がなると言うことが暗黙の了解事項になっている。



つまり、アメリカの影響力が極めて強いわけね。

その通りですよ。

でも、そのこととチョコレートがどのように関連しているの?

あのねぇ〜、シルヴィーは「アメリカ軍用チョコレート」という言葉を聞いたことがある?

初めてだわ。

アメリカ軍が兵士に配給しているチョコレートなのですよ。 主に士気高揚とカロリー補給を目的として兵士に与えている。 高温下でも簡単に溶けないようチョコレートなのですよ。 ちょっと粉っぽい食感が特徴らしい。 このチョコレートは、1937年から標準配給品(レーション)のひとつになっている。 このチョコレートの大部分は、米国チョコレートメーカー最大手のハーシー社(The Hershey Company)が製造しているのですよ。

。。。で、チョコレート業界に何か問題でも起こったの?

あのねぇ〜、ハーシー社ばかりじゃなく、アメリカのチョコレートメーカーはアフリカで取れるカカオ豆を輸入しているのだけれど、カカオ豆というのは価格も不安定ならば、カカオの木が病害に冒されたりして供給も不安定になりやすい。 そこで、アメリカ政府としてもチョコレート企業としても、原料供給源をアメリカに近い土地に確保したい。 その土地で、ハーシー社が天狗巣病やメクラガメ、黒実病に感染しない交配品種を作ることができれば、供給を確保できるだけじゃなく、増えつつある競争相手に対して大きな強みになる。

それで、そのアメリカに近い土地と言うのは、いったいどこなの?

中央アメリカ北東部、ユカタン半島の付け根に位置するベリーズ(Belize)と呼ばれる国ですよ。 北にメキシコと、西にグアテマラと国境を接し、南東にはホンジュラス湾を挟んでホンジュラスがある。 東はカリブ海に面している。 首都はベルモパン。


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アメリカに近い。 土地は肥沃で英語が話されている。 先住民は従順で、他の中南米の国と違い政治は比較的安定している。 ベリーズ政府は国内で全面的に外国資本による事業を認め、輸入関税を減免、税金免除期間を延長した。 ハーシー社にとっては願ってもないような国だった。



そのプロジェクトにアメリカ政府と世界銀行が協力したと言うの?

その通りですよ。 その事が『チョコレートの真実』に次のように書いてある。



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1986年世界銀行が重要な報告を発表、カカオ価格の低下傾向はまもなく逆転するだろうと予測した。
国際市場にカカオがあふれて、フェリックス・ウーフェ・ボワニのコートジボワールの奇跡が崩れ去り、多国籍企業が喜んだことなど、トレドの農民はまったく知らなかった。
業界関係者は皆、これはバラ色の見通しの中の小さな染みにすぎないと農民に語った。

楽観主義の一因として、アメリカ政府の方針と政策がベリーズのカカオを強力に後押ししているのを皆が知っていたことがある。
ベリーズのカカオ生産を推進していたのは、アメリカ国際開発庁(USAID)だった。
この部局はアメリカの外交政策の重要な実行部隊だった。
支援を必要とする相手に物質的な恩恵を与えるが、USAIDは自ら目的の優先順位を決して間違えることはない。
1961年にケネディが身も蓋もなく言った通り、「アメリカの政治的、経済的利益を推進する」ことだ。

USAIDの官僚はCIA(中央情報局)と怪しげなつながりを持っている。
繰り返し否定されてはいるが、ベトナム戦争期の東南アジア、ニカラグアやエルサルバドル動乱のときの中米・ソ連侵攻時のアフガニスタンでの工作にも関係してきた。
いずれにせよ、USAIDはアメリカの利益が関わるところではどこでも、政治的・経済的影響力を働かせる手段になっている。

1980年代後半、USAIDとその下部機関、保守的な汎米開発基金(PADF)はハーシー社、ベリーズ農務省と共同で、「カカオ促進プロジェクト」を始動させた。...1988年、3日間にわたってベリーズで開かれた長い会議の資料と議事録を見ると、有力関係者がカカオ産業の商業的可能性について、どれほど甘い言葉を並べたかがわかる。
...
壇上に上がった別のベリーズ政府関係者は、耳寄りな話をちらりと披露して見せた。
わが国は現在、2000万ドルの融資を世界銀行と交渉中である。
わが国の熱帯雨林を生産性豊かなカカオ農園に生まれ変わらせるためだ。
世界でもっとも有力な機関のうちの2つまでがついている。
カカオ促進プロジェクトの有難い話にも説得されたとれど農民に、議論の余地などあるはずもなかった。
...
ハーシー社は、ベリーズ産の豆をすべて「市場価格で」買い取るという約束を喜んで守るつもりだった。
1988年、ベルモパンのフォーラム会場を埋めた生産者にハーシー社が約束したときには1ポンド当たり1ドル70セントだった。
まもなく1990年代初めに価格は1ドル25セントに下落、さたに90セント、70セントと急落した。
1993年ハーシー社が55セントしか出さないことに決めたとき、農民たちはこれでおしまいだと悟った。
「収穫することさえ意味がなくなっていました」
...
農民たちはカカオを農園で腐るに任せた。 ...祖先が2000年前に育てた奇跡の作物で貧困を脱出するという夢は敗れ去った。


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(赤字はデンマンが強調のため。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)



338-343ページ 『チョコレートの真実』
著者: キャロル・オフ (北村陽子・訳)
2007年9月1日 第1版第1刷発行
発行所: 英治出版株式会社 


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