坊っちゃんと敬語(PART 2)
その例として次の『坊っちゃん』が紹介されてるう。
(kiyo003.jpg)
清はおれがうちでも持って独立したら、一所(いっしょ)になる気でいた。
どうか置いて下さいと何遍も繰り返して頼んだ。
おれも何だかうちが持てるような気がして、うんおいてやると返事だけはして置いた。
ところがこの女は中々想像の強い女で、あなたはどこが御好き、麹町ですか麻布ですか、御庭へぶらんこを御こしらえ遊ばせ、西洋間は一つで沢山ですなどと勝手な計画を独りで並べていた。
(略)
そんなものは欲しくないと、いつでも清に答えた。
すると、あなたは慾がすくなくって、心が綺麗(きれい)だと云(い)って又賞(ほ)めた。
清は何と云っても賞めてくれる。
(略)
愈(いよいよ)約束が極(き)まって、もう立つと云う三日前に清を尋ねたら、北向きの三畳に風邪を引いて寝ていた。
おれの来たのを見て起き直るが早いか、坊っちゃん何時(いつ)家(うち)を御持ちなさいますと聞いた。
卒業さえすれば金が自然とポケットの中に湧(わ)いて来ると思っている。
そんなえらい人をつらまえて、まだ坊っちゃんと呼ぶのは愈馬鹿げている。
おれは単簡(たんかん)に当分うちは持たない。
田舎へ行くんだと云ったら、非常に失望した容子(ようす)で胡麻塩の鬢(びん)の乱れを頻(しき)りに撫(な)でた。
余り気の毒だから「行く事は行くがじき帰る。 来年の夏休みにはきっと帰る」と慰めてやった。
それでも妙な顔をしているから「何を見やげに買って来てやろう、何が欲しい」と聞いてみたら「越後の笹飴(ささあめ)が食べたい」と云った。
越後の笹飴なんて聞いた事もない。
第一方角が違う。
(略)
出立(しゅったつ)の日には朝から来て、いろいろ世話をやいた。
(略)
(kiyo001.jpg)
車を並べて停車場へ着いて、プラットフォームの上へ出た時、車へ乗り込んだおれの顔をじっと見て「もう御別れになるかも知れません。 随分御機嫌よう」と小さな声で云った。
目に涙が一杯たまっている。
おれは泣かなかった。
然(しか)しもう少しで泣くところであった。
汽車が余(よ)っ程(ぽど)動き出してから、もう大丈夫だろうと思って、窓から首を出して、振り向いたら、やっぱり立っていた。
何だか大変小さく見えた。
(略)
それから二 三日して学校から帰ると...清からの便りだ。 ...坊っちゃんの手紙を頂いてから、すぐ返事をかこうかと思ったが、生憎(あいにく)風邪を引いて一週間ばかり寝ていたものだから、つい遅くなって済まない。
その上今時の御嬢さんの様に読み書きが達者でないものだから、こんなまずい字でも、かくのに余っ程骨が折れる。
甥に代筆を頼もうと思ったが、折角(せっかく)あげるのに自分でかかなくっちゃ、坊っちゃんに済まないと思って、わざわざ下たがきを一返(いっぺん)して、それから清書をした。
清書をするには二日で済んだが、下た書きをするには四日かかった。
読みにくいかもしれないが、これでも一生懸命にかいたのだから、どうぞ仕舞いまで読んでおくれ。
(略)
おれは早速辞表を書こうと思ったが、何と書いていいか分からないから、私儀都合有之(これあり)辞職の上東京へ帰り申候(もうしそろ)につき左様御承知被下度(くだされたく)候以上とかいて校長宛(あて)にして郵便で出した。
(略)
清の事を話すのを忘れていた。
---おれが東京へ着いて下宿へも行かず、革鞄(かばん)を提(さ)げたまま、清や帰ったよと飛び込んだら、あら坊っちゃん、よくまあ、早く帰ってきて下さったと涙をぽたぽたと落とした。
おれも余り嬉しかったから、もう田舎へは行かない、東京で清とうちを持つんだと云った。
その後ある人の周旋で街鉄(がいてつ)の技手になった。
月給二十五円で、家賃は六円だ。
清は玄関付きの家でなくっても至極満足な様子であったが気の毒な事に今年の二月肺炎に罹(かか)って死んでしまった。
死ぬ前日おれを呼んで坊っちゃん後生だから清が死んだら、坊っちゃんの御寺へ埋めて下さい。
御墓のなかで坊っちゃんの来るのを楽しみに待っておりますと云った。
だから清の墓は小日向(こびなた)の養源寺にある。
(赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
写真とイラストはデンマン・ライブラリーより)
『坊っちゃん』
著者: 夏目漱石
新潮文庫 2001年刊
「敬語はそれが意識されずに語られたり書かれたりすると、まるで生命(いのち)あるもののように、いきいきとしたり、冴(さ)えわたったりする」 マジで、その通りやと、わても思うねん。 つまり、上の『坊っちゃん』の二人の会話が「いきいきとしたり、冴(さ)えわたっ」ているのは、もうすでに読み手の心に敬語が意識されてないからやないかいなァ! この上の部分を敬語を全く使わずに英語に訳しても、坊っちゃんとお清さんの心の交流は間違いなくアメリカ人にもカナダ人にも伝わる。
そうやろかァ?
第一、わては上の文章を読んで、敬語が全く日本語に溶け込んでいるので、どれが敬語なのか?と考える気にもならへんかった。 つまり、坊っちゃんとお清さんの心の交流は敬語を越えている。 だから、敬語を意識しなくても、すんなりと読めるのやないかいなァ! 敬語が重要なのではなくて、心の交流が大切なのやがなァ〜。
【レンゲの独り言】
ですってぇ〜。。。
あたしは坂本九ちゃんが主演している『坊っちゃん』を観ましたわ。
坂本九 映画『坊っちゃん』
(kiyo005.jpg)
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とっても面白い映画でした。
でも、あの悲惨な飛行機事故で坂本九ちゃんは帰らぬ人となってしまいましたわ。
本当にお気の毒なことでした。
とにかく、次回も興味深い話題が続くと思います。
また読みに戻ってきてくださいね。
じゃあ、また。。。
ィ〜ハァ〜♪〜!
メチャ面白い、
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こんにちはジューンです。
和製英語って聞いたことがあるでしょう?
日本で作られた英語風のカタカナ言葉のことです。
ただし、英語圏ではまず通じないものが多いようです。
「フォアボール」は英語では「base on balls」です。
「ベースアップ」は「pay raise」。
「レベルダウン」は「level decrease」。
「ファンタジック」は「fantastic」というのが
英語本来の言葉です。
また、「ワープロ」は「word processor」。
worpro と言っても通じません。
「パソコン」は「personal computer」
pasocom といっても北米人には通じないでしょう。
「エンゲージリング」は
「engagement ring」です。
engagering と言えば、
頭の回転が速い北米人には、
なんとなく意味が判るかもしれませんが、
普通の人は多分聞き返してくるはずです。
ところで、卑弥子さんが面白いサイトを
やっています。
興味があったら、ぜひ次のリンクをクリックして
覗いてみてください。
■『あなたのための笑って幸せになれるサイト』
とにかく、今日も一日楽しく愉快に
ネットサーフィンしましょう。
じゃあね。 バーィ