スルーパスと芦雪(PART 4 OF 5)
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東(ひむがし)の
野に炎(かぎろひ)の
立つ見えて
かへり見すれば
月傾(かたぶ)きぬ
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上のつまらない和歌が『万葉集』の中に柿本人麻呂の代表的な歌として載せられている。 なぜだと思いますか?
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どうしてですか?
万葉集を編纂した大伴家持が歴史の真相を後世の我々に知って欲しかったからですよ。
その歴史の真相ってぇ何ですのォ~?
だから、高市皇子を天皇にするための政治的活動があったということですよ。
でも、そのような事を歴史の時間に先生は言いませんでしたわ。
多分、そのような事を言った人はあまり居ないでしょうね?
でも、デンマンさんはマジで柿本人麻呂が高市皇子を天皇にする政争に巻き込まれたと信じているのですか?
マジで信じています。
。。。で、上の和歌の真意はどのようなことになるのですか?
次のようになるのですよ。
東(ひむがし)の
野に炎(かぎろひ)の
立つ見えて
かへり見すれば
月傾(かたぶ)きぬ
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(kaki003.jpg->kaki005.png)
ああ、何ということだ
持統天皇の野心と陰謀は
ついに、ここまで剥(む)き出しにされ
大津皇子は自殺に追いやられてしまった。
この分では高市皇子が皇位につくこともあるまい。
命を永らえることさえ危(あや)ういのだ。
高市皇子の運命は、今、まさに沈もうとする
月のようではないか…。
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でも、柿本人麻呂の和歌に上のような歴史的事実が込められているという根拠があるのですか?
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ありますよ。 あのねぇ~、柿本人麻呂の和歌を選んだのは万葉集・編集長の大伴家持なのですよ。 この人は万葉集の最後に自分の歌を載せている。
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(yakamo3.jpg)
新しき 年の初めの 初春の
今日降る雪の
いやしけ吉事(よごと)
新しい年の始めの初春の
今日降る雪のように、
これからの世には
よい事がいっぱいありますように…。
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これは天平宝字3(759)年の元旦に詠んだ歌なのですよ。 でもねぇ、大伴家持の願いとは裏腹に、このあと家持には良い事は起こらなかった。 むしろ悪い事が待っていた。
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どのような。。。?
あのねぇ~、この歌を詠んでから26年後の延暦4(785)年8月28日に、大伴家持は奥州の多賀城で68歳の生涯を閉じたのです。 ところが、藤原氏は家持が死んだ後も、そっとしておいてはくれなかった。
大伴家持が亡くなってからって。。。死んでからでは何もできないでしょうに。。。
でも藤原政権はしつこいのですよ。。。翌年、京都で藤原種継(たねつぐ)暗殺事件が起きた。
その事件と大伴家持が関係あるのですか?
大いに関係がある。 権力を握る藤原氏によって大伴家持は、その事件の首謀者の一人に仕立てられてしまったのですよ。 しかも、大伴家持の遺骨は掘り返されて隠岐(おき)の島に流刑にされてしまった。
わざわざ遺骨を掘り起こして隠岐(おき)の島まで持っていったのですか?
そうなのですよ。 現在から見れば常識では考えられないような事をした。 つまり、それほど大伴家持は睨まれていた。
なぜ。。。?
だから、大伴一族は藤原氏に抵抗する集団と考えられていた。
どうして。。。?
なぜなら、大伴家持のお父さんの大伴旅人(たびと)は長屋王に協力していた。 当然のことだけれど、長屋王の父親・高市皇子や、その協力者・支援者だった柿本人麻呂の事なども大伴家持は、お父さんの旅人から聞かされていた。
つまり、大伴家持は柿本人麻呂が高市皇子を天皇にしようという政治活動に参加していたこと、それがもとで持統天皇に睨まれて左遷されてしまった事などをお父さんの旅人から聞かされていたとデンマンさんは主張するのですか?
その通りですよ。 だからこそ、一見つまらなそうに見える柿本人麻呂の和歌を大伴家持は『万葉集』に取り上げたのですよ。
要するに、何百年後に生きているデンマンさんのような歴史馬鹿に、歴史の真実を知ってもらおうとして『万葉集』の中に柿本人麻呂の「かぎろい」の和歌を取り上げたのですか?
そうです。。。でも「歴史馬鹿」だけ余計ですよ。(苦笑) とにかく、歴史の事実をはっきりとは書けなかった。 つまり、柿本人麻呂が芦雪のような日本画家だったとしたら、当時、巨象の姿、つまり持統天皇の悪事をすべて描くことができなかったのですよ。
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(rosetsu1.jpg)
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どうしてですか?
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持統天皇に睨まれたら首が飛んでしまう。。。 じっさい、彼は左遷されてしまった。 だから、次のようにしか描けなかった。
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(rosetsu1c.jpg)
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上の赤枠の部分が柿本人麻呂が詠んだ「かぎろい」の和歌ですよ。 当たり障りのない和歌しか詠めなかった。。。 だから、背景を何も知らずに読むとつまらない和歌なのですよ。。。 でも、大伴家持は背景を充分に知っていた。。。 だから、“空白”の和歌にも“巨象”を見ていた。 それで、一見つまらない人麻呂の歌を『万葉集』に載せたのです。
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つまり、大伴家持は上の赤枠で囲んだ空白しかない和歌を『万葉集』に載せて、現代の私たちが“巨象の姿”を見て欲しいと思ったわけですか?
その通りですよ。。。 「かぎろい」和歌を読む我々が 歌の中に込められた歴史の真実を理解して欲しいと願いながら 大伴家持は『万葉集』に載せたのです。 “行間を読む”という格言があるけれど、この場合、“余白”を読む必要があるのです。
つまり、その事が芦雪の屏風の“空白”を見て デンマンさんのオツムに閃いたのですか?
そういうことですよ。。。
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(laugh16.gif)
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