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戦争を知らないの?(PART 1)

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戦争を知らないの?(PART 1)
 
 

  



スルタンの許を訪れた

アッシジの聖フランチェスコ



ダミエッタまでは攻略したもののその後は苦戦ばかりの第5次十字軍の陣営に、どのような経過でかわからないが、イタリア人の修道僧が現れた。 そして、死に行く兵士たちに神の許しを与えるだけでは気が済まなかったのか、敵方の大将の陣営を一人で訪ねたのである。

あなたの心を平穏にするために神からつかわされた、と告げる修道僧にはスルタンも驚いただろうが、戦争をやめて平和を確立する道だとキリスト教への改宗を勧める若い僧に、周囲にいた人々のほうが激昂した。 だが、スルタンは微笑しただけで、キリスト教軍の陣営に無事送り届けるよう命じたのであった。

死後に聖人に列せられるフランチェスコだが、このときの勧誘は失敗であったと悟ったようで、以後は二度と試みていない。 しかし、21世紀の今でも、アッシジでは年に一度、世界中の宗教の代表者が集まって平和を誓う催しが行われている。





(注: 赤字はデンマンが強調。
写真はデンマン・ライブラリーより)



140ページ 『絵で見る十字軍』
2010年7月25日発行
著者: 塩野七生
発行所: 株式会社 新潮社

『アッシジからの平和』に掲載
(2011年11月5日)




ケイトーは、また塩野さんの本から引用したのね!?



いけませんか?

どうして塩野さんにこだわるのよ?

別にこだわっているわけじゃないけれど、たまたま塩野さんの本を読んだら上のように平和を願う聖人の心に触れている。

上の部分が本の中に書いてあるからって著者が「聖人の心に触れている」事にはならないじゃない。

だから、そこですよ。

そこってぇ、どこよ?

あのねぇ、塩野さんは次の事実を知っているのですよ。

21世紀の今でも、

アッシジでは年に一度、

世界中の宗教の代表者が集まって

平和を誓う催しが行われている。

だから、どうだと言うの?

それにもかかわらず本の中で塩野さんは次のように書いている。


二度と負け戦はしない



憲法では戦争をしないと宣言しています、なんてことも言って欲しくない。
一方的に宣言したくらいで実現するほど、世界は甘くないのである。
多くの国が集まって宣言しても実現にほど遠いのは、国連の実態を見ればわかる。 ここはもう、自国のことは自国で解決する、で行くしかない。 
また、多くの国が自国のことは自国で解決する気になれば、かえって国連の調整力もより良く発揮されるようになるだろう。

二度と負け戦はしない、という考えを実現に向かって進めるのは、思うほどは容易ではない。
もっとも容易なのは、戦争すると負けるかもしれないから初めからしない、という考え方だが、これもこちらがそう思っているだけで相手も同意してくれるとはかぎらないから有効度も低い。

また、自分で自分を守ろうとしないものを誰が助ける気になるか、という五百年昔のマキアヴェッリの言葉を思い出すまでもなく、日米安保条約に頼りきるのも不安である。

(注: 赤字はデンマンが強調。
写真はデンマン・ライブラリーより)



221 - 222ページ
『日本人へ (国家と歴史篇)』
著者: 塩野七生
2010年6月20日 第1刷発行
発行所: 株式会社 文藝春秋

『女に冷たい女』に掲載
(2011年8月20日)




ケイトーは、またこの部分を引用したのね?



いけませんか?

だから、ケイトーは塩野さんにこだわりすぎるのよ!

いや、何度も言うように塩野さんにこだわっているのではないのですよ。

だったら、どうしてたびたび塩野さんの本から引用するの?

あのねぇ〜、僕は座右の銘に素直に従っているからですよ。




批判のないところに進歩なし

批判なき愛は空虚にして

愛なき批判は盲目なり




この座右の銘もケイトーは何度も何度も記事の中で書いているわよ。



大切だと信じるから僕は何度も書かなければならないのですよ。

でも、お説教じみた座右の銘なんて、読む人にとってウザイだけなのよ!

あのねぇ〜、そう決め付けるのはシルヴィーの独断と偏見だと僕は思うよ。 平和も愛も大切なものなのです。。。この事を素直に信じることができる人ならば「二度と負ける戦争はしない。(勝つ戦争をするために軍備を整える)」なんてことは考えないものですよ。

でも、塩野さんは「二度と負ける戦争はしない」とは書いているけれど、「勝つ戦争をするために軍備を整える」なんて事は書いてないじゃない。

でもねぇ、素直な気持ちになって上の本を読むと塩野さんが言いたいことは、まさに「勝つ戦争をするために軍備を整える」ということなのですよ。

その証拠でもあるの?

塩野さんは本の中で次のように書いている。




自分で自分を守ろうとしないものを誰が助ける気になるか、という五百年昔のマキアヴェッリの言葉を思い出すまでもなく、日米安保条約に頼りきるのも不安である。




要するに、アメリカに頼らずに勝つ戦争をするために軍備を増強することが重要だと、五百年昔のマキアヴェリのおっさんのような事を塩野さんは主張している。



ケイトーの深読みじゃないの?

あのねぇ〜、塩野さんが書いた『日本人へ (国家と歴史篇)』という本を読めばアメリカに頼らずに勝つ戦争をするために軍備を増強すべきだと主張しているのが充分に読み取れるのですよ。 例えば次の箇所でも軍備を持つことは大切だと言っている。


バカになることの大切さ



歴史も前進するとすれば、バカになることの大切さを理解し、それに徹した人々がいたからではないか、という想いである。
この反対が、常に抜け目なく小利口に立ち回り、他者を出し抜くことしか頭にない人々であるのはもちろんで、「歴史」とはイコール「人間世界」である以上、この二つのタイプは昔も今も変わりなく存在してきた。

では、どちらがトクするか。
短期的に見れば、後者がトクする。
しかし長期的視点に立って眺めると、時代がゆっくりと進行した古代でも百年、何もかもが激動する現代ならば十年も過ぎれば、前者のほうがトクするようになる。

軍事力に例をとれば、古代ではほとんどの国が、戦場に送ったのは、カネで傭う傭兵と強制的に徴集した農民だったのだ。
いつでも戦争しているわけではないのだから、必要に迫られたときに必要な人間を集めるこの方法のほうが、経済上からも合理的であったのだろう。

傭兵と農民によるにわか仕立ての軍隊が常識であった時代に、常備軍を制度化したのがローマである。
それでもローマは早い時期から、志願兵による常備軍制度を確立していた。

ローマが強かった要因にはいくつもあげられるが、その第一が常備軍制度にあったとは、研究者の間でも定説になっている。
いつでも軍事力を行使できるということは、外交の場でも有利に働くのだ。

(注: 赤字はデンマンが強調。
イラストはデンマン・ライブラリーより)



114 - 115ページ
『日本人へ (国家と歴史篇)』
著者: 塩野七生
2010年6月20日 第1刷発行
発行所: 株式会社 文藝春秋

『バカの歴史』に掲載
(2011年9月23日)




だから、それがケイトーの読みすぎなのよ。



僕は素直に読んだだけで、決して深読みしたわけではないのですよ。 シルヴィーも読んでみれば僕の言おうとしていることが分かりますよ。

それで、ケイトーは何が言いたいのよ。

あのねぇ〜、僕は山崎豊子さんの『作家の使命 私の戦後』という本を読んだ。 その中で山崎さんは次のように書いている。




戦争を忘れるということは恐ろしいことです。 自殺と一緒です。 戦場では人間としての誇りもモラルも何もかもなくなるのです。 集団的に相手を殺すだけですからね。 私は戦中派ですけれど、作品の上でその苦労は実ったと思います。...私の青春時代は、学校(大学)は二年生までで、モンペをはいて軍需工場でした。...二年しか学校に行っていないのに年限が来れば卒業証書を出す。 こんなメチャクチャなことはありませんよ。

 (中略)

高松第一高等学校では、1991年より毎年7月に中国研修旅行を行っていて、その参加者全員に、『大地の子』を読むことを義務づけている。 そして帰国後、全員が感想文をしたためている。 ...
「私たちの世代は戦争を知らない、というのではすまされない。 これからは、昔、日本が中国でやったことを反省しながら、僕たちの世代で中国の人と友好関係を作って、戦争の悲劇を絶対、起こらないようにしたいと思った」
毎年、この文集を届けていただいているが、読み終えると、私は思わず手を合わせ、感謝した。 小説で私が云いたかったことを、この生徒さんたちがすべて汲み取ってくれているからである。
小説を読んで、年配の方々が感動したと云ってくださるのはもちろん有難くうれしい。 だが、高校二年生の若い世代が、私たちは戦争を知らなかったということではすまされない、戦争の悲劇は絶対繰り返さないと考えてくださったことは大きな感動である。

(注: 赤字はデンマンが強調。
写真はデンマン・ライブラリーより)



108-109ページ、132-133ページ
『作家の使命 私の戦後』
2009年10月30日発行
著者: 山崎豊子
発行所: 株式会社 新潮社




つまり、山崎さんは自分の戦争体験を基にして深く考えるところがあって戦争には絶対反対なのですよ。



塩野さんだって戦中派だから戦争体験を持っているのよ。

だから、そこですよ。

そこってぇ、どこよ!

戦争を知っているにもかかわらず、人によってその受け止め方が全く違ってしまう。 たとえば作家の野上弥生子(1885−1985)さんは1937(昭和12)年の年頭の新聞に次のように書いていた。




たったひとつお願いごとをしたい。 今年は豊年でございましょうか、凶作でございましょうか。 いいえ、どちらでもよろしゅうございます。 洪水があっても、大地震があっても、暴風雨があっても、……コレラとペストがいっしょにはやっても、よろしゅうございます。 どうか戦争だけはございませんように……

(注: 赤字はデンマンが強調。
写真はデンマン・ライブラリーより)




野上さんは日本がまだ負けた戦争を経験する前に、つまり太平洋戦争が始まる前に、このような事を書いていたのですよ。



塩野さんだって戦争が好きなわけじゃないと思うわ。 誰だって戦争よりも平和の方がいいのよ。

でもねぇ〜、中には平和よりも戦争が起こった方がよいと考えている人だっている。 だから、戦争がなくならない。

誰がそのように考えているのよ。

武器を売る「死の商人」たちや「軍産複合体の黒幕」たちですよ。 ジューンさんが次のように書いていましたよ。




こんにちは。ジューンです。

第41代および第43代米国大統領を生み出した

ブッシュ家は、軍産複合体を生業としてきました。

第43代米大統領の曽祖父のサミュエル・ブッシュは

オハイオ州で兵器を製造していた

バッキー・スティール・キャスティング社を

経営していました。
 
 

 
東京大空襲で焼け野原になった江東区
 
 
祖父のプレスコット・ブッシュは東京大空襲で

大量に使用された焼夷弾である

集束焼夷弾E46の製造を

行なっていたドレッサー・インダストリーズ社に

関与していたのです。

第41代ブッシュ大統領は

このド社の石油部門で働いていたのです。

その後、第41代ブッシュ大統領はCIA長官、

副大統領、大統領時代において、

海外との兵器貿易を押し進めており、

副大統領時代には

イラン・コントラ事件が起きています。

この事実だけを見ても、

「軍産複合体」の動きが見えてきますよね。




『あなたの平和な日々』より
(2011年9月7日)




。。。で、ケイトーは何が言いたいのよ。



同じ戦争体験を持っている人でも必ずしも戦争絶対反対する人ばかりいるわけじゃない。

そうれはそうだわ。。。日本の諺でも「十人十色」と言うじゃない。

だから、歴史を学ぶということは必要ですよ。 

 (すぐ下のページへ続く)


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