ブチギレる時(PART 2 OF 3)
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名刺には次のように書いてあるねん。
足利銀行
Retail & Relationship
〜地域のためにできること〜
支店長代理
尾花 隆
行田支店
埼玉県行田市行田21−20 〒361-8603
TEL. 048-556-2101 (代表)
FAX. 048-553-2827
http://www.ashikagabaqnk.co.jp
支店長代理とムキになってやり合いはったん?
そうなのやがなァ。
。。。で、どないな事が問題になりはったん?
実は、今回の帰省では足利銀行に預けてある貯金から30万円ほど引き出すつもりでバンクーバーを発ったのやがなァ。 もちろん、万が一のためにクレジットカードを持って行ったけど、できるだけ現金で支払おうと思っておったのや。
それで。。。?
ところが、お袋に預けておいた通帳と印鑑が探しても見当たらない。 10年以上前に預けてから一度も使ってへん。 お袋もどこに置いたのか忘れてしもうてる。 部屋の模様替えをしたりで箪笥を新しいのに替えたりして、その時に保管場所を変えたらしいねん。 10年前とは様変わりしていたのやァ。 お袋も年だし、最近、物忘れが激しくなってる。 いろいろと探してもらったけれど、どうしても見つからへん。
それで、通帳を再発行してもらい、新しい印鑑を再登録しやはったん?
そうなのやァ。 ところが土曜、日曜をはさんで10日かかると言うねん。
それで。。。?
「10日も待てへん。 カナダやったら、そもそも、このような不便な事は起こらへん! ペーパーレスで通帳などないし! 印鑑も使わへん。 サインするだけやねん!」 。。。と、わては言うたのやがなァ。
カナダの銀行はペーパーレスやのォ〜?
そうやァ。 通帳もないし、もちろん印鑑など初めからあらへん! 身分証明書を見せて金額を言えば、すぐに金を出してくれる。 たいていは街角の ATM(Automated Teller Machine)の端末で、デビットカード(Debit Card)を使って貯金を引き出すことができよる。
あんさんは初めから支店長代理に話しやはったん?
初めは、女子行員に話したのやけど、埒(らち)が開(あ)かへんと思うたので「支店長を呼んで来て欲しいねん」と言うたのや。 そしたら、支店長は出張中やとかで居(お)らへん。 そいで支店長代理が出てきたというわけやがなァ。 どうせ身元をはっきりさせねばならないと思うたから、自動車免許書とパスポートを持って行った。
それで、あんさんは、どのように言いはったん?
支店長代理とわての対話をここに書き出すよってに、読んで欲しいねん。
カナダならば通帳なし印鑑なしだから、そもそも、このような不都合なことは起こらないのですよ。
それは分かっておりますが、デンマン様は現在日本におりますので日本の銀行の規則に従ってもらいませんと。。。
もちろん、それは分かっていますよ。 でもねぇ〜、通帳を再発行するのに10日もかかるなんて、このコンピューター化の時代に余りにも遅すぎるとは思いませんか!? 僕は、日本の銀行も国際化の波に乗ってペーパーレスになっているのではないかと思っていたのですよ。
残念ながら、日本では通帳が無い「ペーパーレス預金・引き出し」に対してはお客様が拒否反応を示すほどです。 通帳のない銀行業務など信用できないと思っているお客様が大半です。
それは、あなたの個人的な意見ではありませんか? 通帳も必要なく、印鑑も必要がなければ、今回のような問題は初めから起こらなかったのですよ。 ものすごく便利ですよ。
それは私にも理解できます。 しかし、カナダと日本では考え方の違いもありますし、銀行業務もすぐに欧米並みに移行することは困難なのです。
あのねぇ〜、足利銀行を今すぐに欧米並みにペーパーレスにしなさいと僕は言っているのではないのですよ。 僕の家族は僕が子供の頃からあなたの支店を使っている。 僕は小学校に通う時には毎日、あなたの支店の前を歩いて中央小学校に通ったものですよ。 僕の祖母の時代から考えれば、加藤家はあなたの銀行と100年近いお付き合いがあるのですよ。
分かっております。 台帳を見ればデンマン様のご家族が私どもの銀行を長い間お使いになっていることがすぐに見て取れます。
だから、僕の普通貯金が合わせて500万近くある。 そのお金を担保にすぐに30万円ほど貸していただけませんか? とても10日も待てないのですよ。 今回は仕事で人に会わなければならないので3日以内に30万円を都合つけたいのですよ。
しかし、そのような事をいたすわけには参らないのです。
どうして。。。?
なにぶん、通帳も印鑑も無いとなりますと銀行の規則で通帳と印鑑がそろわない限り、500万円の普通貯金を担保に30万円をお貸しする事はできない規則になっております。
あのねぇ〜、よ〜く考えてくださいよ。 あなたの銀行にはリスクは何も無いのですよ。 あなたは僕の身元を確認した。 僕が30万円を持って逃げたとしても、470万円は僕の銀行講座に残っている。 どのようなリスクがあなたの銀行に降りかかると言うのですか?
デンマン様のおっしゃる事は私にも理解できますけれど、なにぶん銀行には規則というものがありまして、規則を無視して30万円をお貸し申上げるわけにはゆかないのです。
僕は利子を払わないと言ってるわけじゃない。 ちゃんと利子も払いますよ。
利子を払っていただいたとしても規則を曲げるわけにはゆかないのです。
あなたは規則の事ばかり言うけれど、お客さんのためを考えてあげる事をしないの?
もちろん考えるようにしています。
だったら、今、客である僕のために便宜を図ってくださいよう。 あなたの名刺にも「地域のためにできること」と書いてあるでしょう! 地域のためにできることを考える前に、まずお客さんのためにできることを考えてくださいよ。 加藤家はあなたの銀行と100年にわたるお付き合いがあるのですよ。 そこを考えて30万円を貸してください。
何度も申し上げるようですが銀行には規則がありまして。。。
それはあなたの銀行の勝手な規則なんですよ。 お客さんのためではなく、銀行の身勝手な規則なのですよ。 さっきも言ったようにあなたの銀行が僕に30万円貸したとして、僕が返さずにバンクーバーへ持っていってしまっても、その30万円と利息は僕の銀行口座から差し押さえる事ができるのですよ。 つまり、あなたの銀行には全くリスクが無い。 僕も助かるし、あなたの銀行はお客さんのために便宜を図るという、素晴らしいサービスを提供した事になるのですよ。
デンマン様のおっしゃる事は私にもよ〜く分かります。 でも、銀行の規則を曲げるわけにはゆかないのです。
あのねぇ〜、あなたは規則、規則と言うだけで、お客さんのためを一切考えようとしない。 お客さんの便宜を図ろうという誠意が全く見られない。 僕があなたの立場にあるならば、個人の責任において100年近いお客様に対して便宜を図りますよ。 それが20代の女子行員と40代の支店長代理の違いでしょう!? 「支店長を呼んで来て欲しい」と言ったのはそのためですよ。 あなたには個人的な責任においてお客さんの便宜を図るだけの権利と義務と責任を持っている。 違いますか? あなたの話は20代の女子行員と全く変わらないではありませんか!
おっしゃる事はごもっともですが、なにぶん日本ではそのようなわけにはゆきません。
あのねぇ〜、日本、日本と言うけれど、すでに国際化社会になっているのですよ。 30年前と比べたら、比較にならないほど自由化が進み金融市場にも海外の資本がずいぶんと入ってきているでしょう!
存じ上げております。
あのねぇ〜、オシム・ジャパンのオシム監督が次のようなことを言っていたのですよ。
当時のグラーツ (オーストリア・サッカーリーグの中堅クラブであるシュトルム・グラーツ) は4−4−2のフォーメーションでロングボールを蹴って、ひたすら身体を張る、そんなチームだった。
それでも勝つことがあるが、オシムはそういうサッカーを観客をスタジアムから遠ざけると考えていた。
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「システムは関係ない。
そもそもシステムというのは弱いチームが強いチームに勝つために作られる。
引いてガチガチに守って、ほとんどハーフウェイラインを越えない。
で、たまに偶然1点入って勝ったら、これは素晴らしいシステムだと。
そんなサッカーは面白くない。
例えば国家のシステム、ルール、制度にしても同じだ。
これしちゃダメだ。 あれしちゃダメだと人をがんじがらめに縛るだけだろう。
システムはもっとできる選手から自由を奪う。
システムが選手を作るんじゃなくて、選手がシステムを作っていくべきだと考えている。
チームでこのシステムをしたいと考えて当てはめる。
でもできる選手がいない。
じゃあ、外から買ってくるというのは本末転倒だ。
チームが一番効率よく発揮できるシステムを選手が探していくべきだ」
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オシムはまるで因習のようにこびり付いたクラブ内の縛りを取り払い、グラーツの改革に乗り出した。
システムは人の上に君臨するものではない。
(赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。)
121ページ 『オシムの言葉』
著者: 木村元彦
2006年4月8日 第6刷発行
発行所: 株式会社 集英社インターナショナル
あなたの言う規則がシステム、ルールですよ。 オシム監督は言っているでしょう! システムは人の上に君臨するものではないと。。。
でも、それはサッカーの場合ではありませんか?
あなたが、そう言うのならば金融業界の話をしますよ。 野村證券のスキャンダルはあなたも知っているでしょう?
存じ上げております。
あのスキャンダルの仕掛け人は大蔵省の証券局長だった。 野村證券は証券局を脅かすほどに巨大化し、当局を不安に駆り立てるような新しい分野のビジネスにも取り組んでいた。 野村証券は規模においても影響力においても巨大化しすぎてしまった。 当時、野村證券の資産総額はアメリカの主要な証券会社3社を合わせたよりも多くなっていた。 その後、あのバブルがはじけた。 その時、野村證券は大口の顧客の損失を埋めてやった。 あなたも知っているでしょう?
ええ。。。存じ上げております。
僕やあなたのような一般のお客さんの損失を野村證券はカバーしてくれたか? どうですか?
一般のお客さんの損失については何もしなかったと聞いております。
そうですよ。 規則なんていい加減なものなんですよ。 大口のお客さんには損失を埋めてやるのに、一般のお客さんの損失は無視する。 証券スキャンダル当時、証券会社が暴力団の稲川会の会長に約360億円を融資したと言ってメディアが騒いだ。 つまり、一般のお客さんを犠牲にして大企業のお客さんとか暴力団の会長を保護する。 そして、あなたは、そのような下らない規則を振り回して、規則があるのでできませんと言う。 誰のための規則なのか? 僕はあなたに、その事を考えて欲しいと言っているのですよ。
しかし、規則がありますものですから。。。
だから、あなたの支店長代理としての権利と義務と責任において100年近いお客である僕のために、あなたの銀行には全くリスクのない30万円を貸してくださいと僕は頼んでいるのですよ。 僕があなたの立場なら僕は30万円を出しますよ。
デンマン様のおっしゃることはよく理解できますが、規則を破ったことで私がクビになりますと家族を路頭に迷わせることになりますので、残念ながら私個人としてはできかねます。
(すぐ下のページへ続く)