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壁に耳あり障子に目あり(PART 3 OF 4)

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壁に耳あり障子に目あり(PART 3 OF 4)


それは忘れもしません(2011年)3月25日のことでした。
図書館の6階にあるパソコンで僕は次の記事を書いていたのですよ。





『すはま』(2011年3月23日)

午前11時半に書き始めて、ちょうどお昼になろうとする頃に停電ですよ。
急にスクリーンも部屋の中も真っ暗になって、パソコンはプツンと切れたような音を発してダウンですよ。
福島の原子力発電所のような障害が発生したわけではないのですよ。
原因は今でも分かりませんが、とにかく偶然の停電です。

エレベータに乗っていた人はビックリしたと思うのですよ。
3秒か5秒の間に緊急発電機が作動したので、図書館の電気はすぐに点(つ)きました。
真っ暗になったと言ってもお昼時ですから窓からは、お日様の明かりが差し込んでいました。
エレベーターに閉じ込められた人以外は、別に暗闇に悩まされたということもなかったのです。

とにかく、電気はすぐに回復したけれど、パソコンは切れたまま。。。
つまり、30分ほど書いた文章がパーになってしまったのですよ。
んもお〜〜!!
保存しておいたとしても図書館のパソコンは再起動した時にハードディスクの記憶も削除するようになっている。
だから、30分ほど書いた文章は、もう取り返しがつかない!



オー・マイ・ゴッド! オー・マイ・ゴッド!

僕はキリスト教徒でもなんでもないけれど、その時には地球が滅亡したような気分になって、もう恥じも外聞もなく絶望から叫んだものですよ!
ちょっと大げさですけれどね。 うへへへへへ。。。

でも、その大げさな絶望が上の写真の女性の目に留まったのですよ。
その女性は隣のテーブルのパソコンを使っていました。
僕との間は2メートルぐらい離れていました。

"What a power failure! Have you lost a ton of work?"
(全くひどい停電だけど、あなたは長い文章を失ってしまったの?)

"Oh, yeah!  You're telling me!  Oh, Jesus Christ!"
(その通りなんだよ! まったく、なんてことだい!)

その時、“また、同じ文章を初めから書き直すのかよう!? んもお〜〜!”
僕はそう思うと、うんざりして、たとえマリリンモンローが隣に座っていたとしても、あまり話す気分にはなれなかった。
でも、停電が回復するまでは、他に何もすることが無いのですよ。
それは、彼女とて同じですからね。。。
その時、近くには僕と彼女しか居なかったのですよ。
他に4台空いているパソコンがあったけれど、珍しく使っている人は誰も居なかった。
これも、偶然と言えば偶然の事でした。

そう言う訳で、停電がまもなく回復することを願いながら僕と彼女は世間話を始めたと言う訳です。
英語を書くのは面倒だから、これからは日本語だけで書きますよ。



あなた、これからどうするつもりなの?



どうするってぇ、緊急発電機が作動して図書館の電気が点いたのだから、コンピューター・システムもまもなく回復するんじゃないかな?

そうねぇ〜。。。早く回復するといいのだけれど。。。ところで、私、シルヴィーっていうの。。。あなたは。。。?

ん。。。? ぼく。。。? ケイトー(Kato)だよ。 あの有名なグリーン・ホーネットに出てくるブルース・リーが演じている役と同じ名前なんだよ。

あら、そうなのォ〜?

あなたの名前で僕は思い出したよ。 シルビアホテルがイングリッシュ・ベイにあるのですよ。 古いけれど夏にはツタが絡まって、なかなか風格のあるホテルなんだよ。 時には知り合いの女の子とシルビアホテルの近くのレストランで食事をすることもあるのですよ。



【シルビア・ホテル】



あらっ。。。あなたってぇ、見かけによらずにグルメなのね?



いや。。。、僕はグルメじゃありませんよ。 僕の知り合いがグルメなのですよ。

でもねぇ、私の名前はシルビアではないのよ。

あれっ。。。でも、あなたはついさっきシルビアと言ったばかりじゃないですか!

いいえ。。。シルビア(Sylvia)ではなくてシルヴィー(Sylvie)なのよ。 語尾が違うのよ。 元々は、どちらもラテン語から派生した言葉らしいわ。

でも、シルビアの方が世界的によく使われているようですね?

そうなのよ。 あの『エマニエル夫人』になったシルビア・クリステル(Sylvia Kristel)が登場したおかげで“シルビア”の方が世界的に知られるようになったんだと思うわ。





。。。で、シルヴィーは『エマニエル夫人』を観ましたか?



もちろん観たわよ。 私がバンクーバーにやって来てまもなく、1973年にエマニュエル・アルサンの小説『エマニュエル』が大ヒットしたのよ。 その翌年に映画化されてたので、私はバンクーバーで観たわ。。。ケイトーはどうなのよ?

観ましたよ。 世界的に有名になったので観ないと話題についてゆけないと思ったので仕方なく観ましたよ。

 (中略)

図書館に毎日のようにやって来て記事を書くようになったのですよ。

自分の家のパソコンでは書かないの?

ボッコわれてしまったのですよ。

あらっ。。。そうだったの? なるほどォ〜。。。それでねぇ〜。。。納得したわァ〜。。。

何を納得したのですか?

あのねぇ〜。。。実は、私はあなたと会うのは初めてではないのよ。

ん。。。? 初めてではない。。。?

そうなのよ。。。私はあなたと何度も会っているのよ。

まさか。。。?

いえ。。。マジで。。。?

でもねぇ、シルヴィー。。。僕は今日あなたと初めて話をしたのですよ。

ええ、そうだわ。。。でも、私はあなたと何度も会っているのォ。

冗談でしょう!?

マジよ。。。あなたが気づかなかっただけなのよ。 私の話を聞けばあなただって納得するわ。 その前に、私、ちょっと。。。おトイレにいってくるから。。。ここでじっとして待っててね。 じゃあねぇ。 うふふふふふ。。。



『図書館deロマンス』より
(2011年4月10日)

 



シルヴィー,...ずいぶん長かったねぇ〜。。。



あらっ。。。そうかしら?。。。30分ぐらい、どうってことないでしょう? ちょっと気に入った本を見つけたから1章だけ読んでいたのよ。 ケイトーだってぇ、他に何もすることがなかったのでしょう?

待っててねぇ、とあなたが言ったじゃないですかァ!。。。僕はシルヴィーの話を早く聞きたいと思っていたから、1時間ぐらい待っていたような気がしますよ。

それってぇ、ちょっとオーバーよ。

とにかく僕は今日シルヴィーに会ったのが初めてなんですよ。

でも、私はケイトーにマジで何度も会ってるのよ。

だけど僕には記憶が全く無いよ。

そうかもねぇ。。。あなたはいつだってパソコンとにらめっこしていたからよ。 私はウェストエンドの分館で、あなたが記事を書いていたのをちょくちょく見かけていたのよ。

ウェストエンドの分館で。。。?

そうよ。。。あなたはいつもDianeの隣で記事を書いていたじゃない!

あれっ。。。シルヴィーはダイアンを知ってるの?

知ってるわよ。。。Dianeとは、ずいぶん前からの友達なのよ。 あの人ときたらケイトーと同じで、英国系カナダ人には珍しく勤勉なタチなのよ。。。日曜日は教会へ行くからパソコンに向かわないけれど、月曜日から土曜日まで毎日決まった時間にパソコンに向かい合うでしょう。 Dianeだけかと思っていたら、今年の1月頃からケイトーが加わったじゃない。 しかも、決まってDianeの隣に座って、澄ました顔して記事を書いていたじゃないの。。。それも不思議に決まった時間にDianeと隣り合わせでキーボードに向かって打ち込んでるじゃない。。。いったい、どういう事なのかと初めの頃はとっても興味深かったわよ。。。うふふふふふ。。。

知らなかったなあああァ〜。。。ネットをやる場合、ウェストエンドの分館ではパソコンは1時間だけしか使えないんだよ。 1時間では、とっても足りないんだよ。。。それで中央図書館にも足を運ぶようになった。 ここでは2時間使えるからね。 でも、1日3時間でもまだ時間が足りない。 それで僕はダイアンともほとんど話をしないで、わき目も振らずに記事を書いていたと言う訳なんだよ。。。だから、近くにマリリンモンローがビキニ姿で座っていたとしても、じっくりと眺めている暇が無いほど僕は集中していたんですよ。

そうよねぇ〜、だから、私も、もし停電しなかったとしたら、あなたに声をかける気にならなかったと思うわ。

なるほどォ〜。。。

何がなるほどなのよ?

停電で他に何もすることがないからシルヴィーが話しかけてきたとは思うけれど。。。それでも、急に畳み掛けるようにして話してきたから、ずいぶんと社交的な女性だと思って僕は内心ではビックリしていたんですよ。

あらっ。。。私、ちょっと積極的過ぎたかしら。。。?

いや。。。ダイアンと友達だったと聞いて僕も納得しましたよ。。。で、シルヴィーはバンクーバーで生まれて育ったの?

そう見える?。。。でも、違うのよ。

。。。つうことわァ〜。。。もしかして移住者?

そうなのよ。。。ケイトーは私がどこの生まれだと思う?

まあ。。。そうだねぇ〜。。。シルヴィーの表情から察して、多分英国系だと思うけれど。。。イングランドか? スコットランドか? アイルランドか? ウェールズか?。。。恐らくその内のどれかだと思うよ。

まったく違うわ。。。。実は、私はインドネシアで生まれたのよ。

マジで。。。? インドネシアは太平洋戦争前にはオランダの植民地だったから。。。もしかしてシルヴィーの両親はオランダ人?

そうなのよ。。。私の父はオランダ人。 母はオランダ人と華僑のハーフだったのよ。 つまり、私には4分の1の中国人の血が流れているのよ。

なるほどォ〜。。。よく見るとシルヴィーの表情には、どこかに東洋系の特徴があるよ。。。 まず、髪の色が黒っぽい。 鼻があまり高くない。 丸顔がなんとなく東洋系の女を思わせる。。。で、インドネシアからカナダに移住してきたの?

違うのよ。。。実は、私がまだ小さかった頃。。。、1965年にインドネシアには動乱があったのよ。 私は大きくなってから父に聞かされたのだけれど、1963年にマラヤ連邦が北ボルネオをイギリスから譲り受けてマレーシアが建国されると、スカルノ大統領はこれをイギリスによる新植民地主義のあらわれであると非難して「対決政策」を宣言したのよ。



『波乱の半生』より
(2011年4月29日)




それにしても、まあ。。。ある事ない事をずいぶんと書いたわねぇ〜。。。



あった事しか書いてませんよ。

インドネシアの動乱のことなどケイトーに話したかしら。。。?

話しましたよ。 やっぱり、シルヴィーは忘れていたのですね?

もう1年近く前の話じゃない。

とにかく、上の記事を読み返してみてね、停電の時にシルヴィーと中央図書館で出会うまで、僕には Joe Fortes Library でシルヴィーを見た記憶が全くない。 僕が話したこともない図書館のスタッフの女性が僕を覚えていることが不思議だったけれど、考えてみれば、図書館のスタッフでもないシルヴィーに僕の存在が記憶に残るのだから、スタッフならば仕事がら、図書館にやって来る人を覚えているに違いないと、今では納得しているのですよ。

別に不思議でも何でもないじゃないの! ケイトーは些細な事を納得するまでに、ずいぶんと時間がかかるのねぇ〜。。。 (微笑)

 (すぐ下のページへ続く)

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